「通信の秘密」海外企業適用へ プラットフォーマー念頭
総務省の有識者研究会は21日、インターネット上で大量の個人データを扱う「プラットフォーマー」への規制についての論点案をまとめた。電気通信事業法などが定める「通信の秘密」を海外企業にも適用するのが柱。海外のIT(情報技術)大手で個人情報の流出が相次ぐ状況などを踏まえ、通信事業者にかかわる法律で利用者を守る体制を整えるよう求めた。
プラットフォーマーの規制は、政府の研究会が競争政策の観点から見た規制の基本原則を公表している。個人が扱うデータは「金銭と同じ価値がある」とし、企業から個人に対しても独占禁止法における優越的地位の乱用の適用を検討する。
今回の論点案は通信の利用者保護の観点からまとめた。問題点の1つが、今の電気通信事業法は原則として国内に主な拠点を持つ事業者を対象としていることだ。
日本でも検索サービスやSNS(交流サイト)は海外のプラットフォーマーの存在が極めて大きい。しかし米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムのいわゆる「GAFA」は同法の規制からはずれている。
現状では仮にGAFAで日本の利用者が被害を受ける個人情報の流出事故があっても、総務省が同法に基づく行政処分や行政指導などの対応はできない。被害状況の把握すら難しい。
このため論点案は「国民の利便に支障が生じ得る」として、
電気通信事業法の効力が海外にも及ぶ「域外適用」の規定を求めた。海外大手も憲法で定められた「通信の秘密」の対象となる。GAFAも通信の中身や送信先などを利用者の同意なく把握することはできなくなる。中国でネットサービスを手掛ける騰訊控股(テンセント)など幅広い海外企業に規制をかけることになる。
規制案の背景には、国内IT企業の不満もある。GAFAと競合するサービスを手掛けていても法令順守のハードルが高く、研究会の聞き取りでも「異なるルールでの競争は不公平」との声が漏れていた。
域外適用は国内法でも個人情報保護法に条項があり、海外の当局と情報を共有する仕組みがある。総務省は審議会で今春にも報告書をまとめ、電気通信事業法の改正を目指す。
実効性のある制度の整備は課題となる。プラットフォーマーは自前の回線設備を持たずに多様な事業を展開する。GAFAは域外適用になれば規制できるとみられるが、プラットフォーマーの線引きはあいまいだ。あらゆるものがネットにつながるIoTのような機械と機械の通信は、どこまでがプライバシーにかかわるか明確ではない。
海外では欧州の一般データ保護規則(GDPR)が事業者の内外を問わず、欧州内の利用者の保護を定めている。域外の企業には「代理人」の設置義務をかけて、法執行の実効性も確保している。韓国も同様の仕組みがあるという。