携帯大手、プラン見直しへ 通信・端末代「完全分離」で
NTTドコモなど携帯大手は通信料金と端末代金をセットにした料金プランの見直しを急ぐ。総務省の有識者会議が17日、一定期間の通信契約を条件にスマートフォン(スマホ)価格を割り引くプランを廃止する「完全分離」を正式に公表。法改正案の提出や関係指針の策定に入るためだ。端末価格上昇などの懸念が残るが、携帯各社の事業戦略が変わる大きな節目となる。
携帯大手の料金プランは、2年間などの通信契約を条件にスマホ代を割り引くプランが主流。高価なスマホを割安に入手できるメリットがある一方、セット販売によってプランが複雑化。過度な端末割引が通信料金が高止まりしている要因の一つといわれてきた。
総務省の有識者会議は18年11月、こうした構造を抜本的に変えるため、通信料金と端末代金の「完全分離」を緊急提言案として提示。KDDIとソフトバンクが展開する4年間の分割払いを条件にスマホ代を最大半額にする「4年縛り」と呼ぶ手法についても、利用者を過度に拘束するとして抜本見直しを求めた。
緊急提言を受け、携帯大手の料金プランは抜本見直しが必至だ。「分離プラン」と呼ばれる端末割引をしないシンプルな通信プランが主流になる。これまで端末割引に使っていた原資を通信収入に振り分け、料金値下げにつながる期待がある。利用者にとっては通信料金と端末代金が見えやすくなるメリットがある。
NTTドコモは4~6月に従来から2~4割値下げした分離プランを導入する方針だ。KDDIとソフトバンクは既に分離プランを導入済み。ただ、端末価格の上昇を4年縛りによって抑えていることから緊急提言案に強く反論しており、プランの見直しなどで曲折がありそうだ。
KDDIは「(次世代通信規格の)5G普及に向けて端末価格の高額化を懸念。適切な端末割引は認められるべきだ」と主張する。完全分離によって端末割引が制限され、スマホが高額化する恐れがあるからだ。ソフトバンクは4年縛りの見直しについて「既に条件を見直しており、利用者を過度に拘束するものではない」としている。
総務省はKDDIの主張について「利用者の自由な選択確保のためには分離の徹底が必要」と指摘。端末単体の割引きは認められるとした。ソフトバンクについても現状の取り組みでは不十分とし「抜本的に見直すことが必要」と意見を退けた。
消費者にとっての懸念は、端末代金が高価格スマホを中心に跳ね上がる恐れがあることだ。より安い端末を求めて、中古スマホや通販などで端末を購入し、通信契約と組み合わせて利用するような形態も増えそうだ。
携帯市場のビジネスモデルが抜本的に変わるため、市場の混乱も想定される。有識者会議の構成員である慶応義塾大学の黒坂達也特任准教授は「国民生活への影響が極めて大きいため、法改正など具体的なスケジュールを周知する必要がある」と指摘する。