米金融大手、好決算に綻びも 収益環境が曲がり角
市場混乱が直撃、住宅ローン不振
【ニューヨーク=大塚節雄、宮本岳則】高収益を謳歌してきた米大手金融の決算に綻びがみえてきた。2018年10~12月期は減税効果が続き総じて好調を維持したが、市場の混乱が直撃し、債券売買や起債引き受けなどの手数料収入が落ち込んだ。住宅ローンの不振など米景気の変調を思わせるサインも出てきた。19年は景気拡大の勢いが鈍ると見込まれ、収益環境は曲がり角を迎える。
「18年は税制改革の影響を除いたとしても収入、利益ともに過去最高の記録を打ち出した」。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はこう宣言した。年間、四半期ともに最高益となったバンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEOも「記録的な利益を生み出したチームメートを誇りに思う」と胸を張った。
2018年は米大手金融にとって近年まれにみる良好な収益環境だった。大型減税は企業の経済活動や個人の消費活動を刺激。融資増に結びつき、米利上げ継続による利ざやの拡大傾向とあいまって利益を押し上げた。
大手の多くは10~12月期の最終損益が前年同期比で改善した。1年前にあった法人税率の変更に伴う一時的な調整費用がなくなったことが主因だが、JPモルガンやシティグループ、バンカメなどは調整が影響しない税引き前でも増えた。
だが、収益拡大には頭打ちの兆しもみえる。JPモルガンとゴールドマン・サックスの粗利益に当たる純営業収益の動きを四半期ごとにみると、ここに来て伸び悩みの傾向が強まっている。
10~12月期の決算の内容をつぶさにみていくと、好決算のなかにも、いくつかの綻びがみえる。
まずは市場の混乱に対するもろさだ。債券の売買などに伴うトレーディング収入がほぼ軒並み目減りした。相場が荒れたことで株式の手数料収入は増えたが、債券や為替などではあまりの変動に、取引を敬遠する最終投資家が増えた。
シティでは関連の収入が前年同期比で21%落ち込んだ。「相場に方向感が欠けるなか、とくに12月の収入減が大きかった」。マイケル・コルバットCEOはこう明かす。
市場の変調は企業の資金調達の手控えにもつながり、社債や株式などの引受業務に痛手となった。ゴールドマンの引受業務の手数料収入は前年同期比で38%減。スティーブン・シャー最高財務責任者(CFO)は「不安定な相場が企業心理に影響した」と説明する。
米住宅市場の調整を受け、住宅ローンの減退も目立ってきた。JPモルガンの10~12月期の新規融資は172億ドルと前年同期比で30%減り、関連業務の収入も8%落ち込んだ。不正営業問題で再建途上のウェルズ・ファーゴは関連業務の手数料収入が大きく減った。
首脳の多くは19年の収益環境にも強気だが、不透明な要素は多い。減税効果が薄まるなか、米中貿易戦争の影響が強まれば、企業の資金需要が減速しかねない。市場の混乱が再燃するリスクもある。米利上げが止まれば、「虎の子」である利ざやも広がりにくくなる。
米市場では好決算を受け、低迷が続いた金融株に反発の機運が広がる。決算が市場予想を上回ったゴールドマン株は16日に1割近く急騰した。だが収益の先行き不安が強まれば、買いの勢いが衰える可能性もある。
関連企業・業界