回線・スマホのセット販売禁止を提言 有識者会議
携帯電話料金の値下げなどを議論する総務省の有識者会合は17日、回線の契約を前提にスマートフォン(スマホ)代を安くする「セット販売」を法律で禁止するように求める提言を発表した。スマホの割引分を補うために通信料金が高止まりしていると判断した。割引によって複雑化した料金プランを分かりやすくする狙いもある。4月以降の法改正を目指す。
携帯大手はこれまで、通信契約を前提にスマホ代を安くするプランが主流だった。ただ安くなる期間はスマホを分割で支払う2年間。2年を超えて同じスマホを使うと割引がなくなり、逆に支払いが増える仕組みだった。そのため多くの消費者は2年おきに最新のスマホに乗り換えていた。
結果として最新機能を必ずしも求めていない人にも最新の高額スマホが行き渡った。スマホの割引分を回収するために、もともとの通信料金が高めに設定され、結果として利用者の総支払額が高くなっているとの批判があった。
会合の構成員でもある野村総合研究所の北俊一パートナーは「スマホがタダ同然に安くなっている分は高い通信料金で回収されているが、それはユーザーには分からない。一体何にお金を払っているのか分かりづらく、非常に複雑だ」と指摘する。
総務省が目指す法改正では通信とスマホの料金を完全に分離し、セットで契約したほうが安くなるような状況をなくす。スマホ単体での値引きは規制しない。
セット販売のほか、4年間の分割払いを条件にスマホ代を半額にするKDDIとソフトバンクの「4年縛り」と呼ばれる販売手法についても抜本的な見直しを求めた。スマホ代が安くなる条件に「再度の通信契約」が含まれており、実質的なセット販売の1つとみなした。
総務省の有識者会合は2018年11月に法改正に向けた緊急提言案を公表し、パブリックコメント(一般の意見公募)にかけていた。
意見公募では「端末購入補助は適切な範囲においては許容されるべきだ」(KDDI)、「負の側面だけでなく、プラスの側面もある」(ソフトバンク)と民間から反発する声も出たが、17日の会合では構成員の賛同により、正式に提言されることが決まった。
セット販売が禁止されれば、消費者にとって本来のスマホ代、通信料金が見えやすくなる。安価や中古スマホや格安通信サービスとの比較もしやすくなる。スマホ代の割引がなくなる分、携帯大手が既存の契約者に還元する動きも期待できる。
一方で米アップルの「iPhone」を筆頭に端末価格が上がるなか、頻繁に最新スマホに乗り換える動きは沈静化し、一台あたりの使用期間が長くなりそうだ。(河野真央)