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進化した野球は面白いか データ重視の落とし穴

野球データアナリスト 岡田友輔

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まもなく動き出すプロ野球。今回は近年、ますます重視されるようになっているデータと野球の関係について思うところを語ってみたい。コーヒーブレークのつもりで読んでもらえるとうれしい。

初回だけを担う先発投手「オープナー」

日本ハムの栗山英樹監督は、オリックスから移籍してきた金子弌大(ちひろ)を「オープナー」として使う可能性を匂わせている。以前のコラムでも紹介したように、オープナーとは米大リーグで実践されるようになった新たな投手起用法から生まれた役割で、試合冒頭の短いイニングを担う投手を意味する。「初回に登板するショートリリーフ」と考えればいい。昨季の大リーグではレイズを筆頭に幾つかのチームがこの作戦を使った。

この新しい継投の考え方はデータに基づいて生まれた。投手は総じて、長いイニングより短いイニングの方が失点が減る。自分の調子を探りながら、1番から始まる相手打線に向かっていく初回はどんな投手にとっても鬼門だ。そこで発案されたのがオープナー。初回を全力で抑えるスペシャリストをつくり、打線が下位に向かう二回から従来の先発を投げさせた方がトータルの失点を抑えられる可能性が高まる、というわけだ。

打順の巡り合わせとの兼ね合いもある。1試合の中で投手が打者に打たれる確率は、3打席目を迎えると上がる。対戦を重ねるほど球筋を見極められ、投手には疲れも出てくるからこれは自然なことだ。一回からそれなりの投球をしていれば六回あたりに上位打線との3度目の対戦となるが、二回から登板すれば3度目の顔合わせがないまま六回を乗り越えられる可能性がある。七回までくれば、その後の継投の計算も立ちやすくなる。

大リーグではこうした"合理的"な作戦が速やかに実行に移される。日本はもう少し保守的だが、栗山監督の発言はあながち冗談とも思えない。今季からプロ野球の1軍公式戦に出場できる「出場選手登録」の人数が28から29に拡大する。つまり従来の戦力はそのままに、オープナーを加えられるようになるわけだ。

データ分析をなりわいとしている私のような立場からすれば、こうした変化は基本的に喜ばしい。しかし、ときに自問自答することがある。勝利への最短距離を模索していくデータ重視の野球は、果たして娯楽としての野球の魅力を高めているのだろうか。

例えば、オープナーという作戦が定着すれば「勝利投手」という概念はまったく別のものになる。先発で白星を手にするには最低5回を投げきらなくてはならないが、オープナーになれば、どれだけ活躍しても勝ち星はつかない。しかし、ファンはビジネスライクな小刻みな継投でチームが勝つことと、五回2死でヘロヘロになりながらも、なんとか白星を手にしようと必死で投げ続ける先発のどちらを見たいだろうか。

最先端の作戦、ファンには意味不明?

オープナーのような奇抜な作戦の根拠になっているデータは、野球関係者の間でも全員に共有されてはいない。ましてや大半のファンにとっては、意味不明となりかねない。リテラシーの高いファンしかグラウンドで起きていることを理解できないのは、エンターテインメントとして望ましいことではない。最近、200勝投手が出ていないことからも分かるように、投手の分業が進むほど、昔ながらのエースは生まれにくくなる。それは野球界のためになるだろうか。

昨季、大リーグ機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーが極端な守備シフトを制限する考えがあることを明かし、話題になった。膨大な打球方向のデータに基づいた打者ごとの守備シフトが投高打低の傾向を強め、ファン離れを招いているという懸念がその理由だ。

確かに最近の大リーグでは平均打率が落ち、三振の比率が上がっている。しかし実は、これは守備シフトよりも投手のレベル向上の影響が大きい。シフトが増加しているにもかかわらず、フェアゾーンへの打球がアウトになる確率は変わっていない。安打が出にくくなったのは、平均球速が増すなど投手力の底上げが主因と考えた方がいい。

近年、大リーグで長打を狙う「フライボール革命」が広がったのも投手のレベルアップと関係している。長打をうみやすいフライを打つ方がゴロよりも得点につながることは従来いわれていた。連打が難しくなった最近は、フライを狙う傾向が一段と顕著になったということだ。

しかし、こうした予備知識がないファンにとっては、三振かホームランかという野球は大ざっぱで、小技や機動力を絡めた野球は繊細に見えることだろう。しかし実際は、より進化した野球の産物が前者だったりする。マンフレッド・コミッショナーの懸念は、ゲームの進化と野球人気が必ずしも比例しないことを図らずも示唆している。

一方でスターが出にくくなっている最先端の野球は、他方で周回遅れの野球と見分けがつきにくい。勝利の追求とエンターテインメント性のバランスをどこで取るのか。野球はいま、とても難しいステージにいる。

 岡田友輔(おかだ・ゆうすけ) 千葉県出身。大学卒業後、民放野球中継のデータスタッフやスポーツデータ配信会社勤務を経て2011年に独立。株式会社DELTAを立ち上げ、野球のデータ分析やプロ球団へのコンサルティングなどを手がける。

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