3年目のトランプ政権(4)政権を去った軍人たち
「過激派組織を99%撃退したのにどうして米軍はシリアに駐留を続けるんだ」。2018年12月14日、トルコ大統領のレジェプ・タイップ・エルドアン(64)は米大統領ドナルド・トランプ(72)を電話で問い詰めた。トルコがテロ組織とみなすクルド人勢力と協力する米軍にいらだちを強めていた。
トランプはそばにいた補佐官ジョン・ボルトン(70)に「99%撃退」は事実かと尋ねた。「正しい」と耳打ちされると「シリアはあなたのものだ。撤収しよう」と言い放った。驚いたのはボルトンだ。「過激派組織は完全壊滅しなければならない」とあわてて米軍駐留の必要性を訴えたが後の祭り。エルドアンも「あまりに早い撤収は避けてほしい」と戸惑うほどだった。
当時の国防長官ジェームズ・マティス(68)は最後までトランプに翻意を促した。だが同20日午後、トランプがツイッターに投稿していたシリア撤収宣言を見て、自らの辞任を決断した。ホワイトハウスを訪れる前に辞表の公開を指示した。「同盟国に敬意を払うべきだ」。マティスの最後の抵抗だった。
「米軍は国境警備で追加支援を検討しています」。19年1月2日の閣議で、マティスの後釜となった国防長官代行パトリック・シャナハン(56)は国境の壁建設にこだわるトランプを援護射撃した。宇宙軍創設を進めるなど、政権内では「イエスマン」とみられている。14日には米軍のメキシコ国境派遣を9月まで延長すると決めた。
1月に大統領首席補佐官代行に就任したミック・マルバニー(51)も親トランプ派の一人だ。18年後半、トランプとの食事の席で「私はスタッフを統括しますが大統領は統括しませんよ」と語った。念頭にあったのはトランプの面会相手や資料を厳しく管理する当時の首席補佐官ジョン・ケリー(68)だ。
マルバニーを長年知る共和党系政治資金団体トップは、彼を「政治の風を読んで行動する人物」と評す。16年秋には大統領候補のトランプを「ひどい人間だ」と語っていたが、17年2月に米行政管理予算局(OMB)局長に就任すると態度は一変。「トランプがトランプらしく振る舞うことが大事だ」とトランプの独断ぶりを称賛した。
これまで政権の中枢にはマティスやケリー、ボルトンの前任者マクマスターなどの軍人が常にいた。いまや全員退場し、残ったのはトランプに忠誠を誓う人物だけ。お目付け役はもういない。(敬称略)