ボーイングとの蜜月続く、CTOが連携強化に意欲
米ボーイングが航空機の電動化や生産自動化など次世代航空機の開発で日本企業と連携する。15日、経済産業省と航空機の技術協力などで合意したと発表した。三菱重工業や東レ、GSユアサなどとも協力し、電動化や複合材などの新技術開発を急ぐ。日本勢は次世代航空機開発への関与を深め、成長を続ける航空機市場での事業拡大に弾みをつける。
同日、東京・千代田の経産省でボーイングのグレッグ・ハイスロップ最高技術責任者(CTO)と経産省の磯崎仁彦副大臣が航空機分野の新たな技術協力で合意した。調印式後に記者会見したハイスロップCTOは「航空業界の将来を形づくるうえで、パートナーを探すのに日本以外に格好の場所はない」と述べた。
航空機の電動化、軽量化につながる炭素繊維の複合材、生産の自動化など主に3分野で日本企業との連携を強化する。ボーイングは協業パートナーに将来の航空機に関する戦略や中長期構想などの情報を提供し、技術の実用化でも協力する。
経産省もボーイングと日本企業や大学、研究機関との関係強化を支援する。次世代航空機の技術で潜在力の高い電機・精密メーカーを紹介したり、有望技術の開発を補助金で支えたりする。磯崎副大臣は「日本の電動化技術などの先端技術が活躍するのを楽しみにしている」と語った。
第1弾として電動化分野において電池でGSユアサ、小型モーターでシンフォニアテクノロジーと多摩川精機(長野県飯田市)、超電導モーターで九州大と産業技術総合研究所と組む。自動車や鉄道などでの日本勢の電池やモーターなどの電動化技術力を評価した。
航空機を将来、ジェットエンジンの代わりにモーターで飛ばすには軽量化を避けて通れない。航空機向けに炭素繊維の複合材を提供する東レとは次世代航空機に向けた新材料の開発で協力する。自動車並みのコストで量産しやすい航空機向けの複合材を開発する。
航空機業界には自動車と同様に二酸化炭素(CO2)削減の流れが強まっている。世界の機体・エンジンなどの航空機関連メーカーが参画する団体、航空輸送アクショングループ(ATAG)は2050年に05年比でCO2排出量半減を目標に据える。現状のジェット機では達成できないため、近年、航空機の電動化の技術開発競争が活発になっている。
欧州エアバスはシーメンスなど欧州企業を軸に電動化の開発を強化している。ボーイングは日本企業とのパートナー関係を強化して対抗する。
一方、航空機の需要拡大によって生産性の向上も課題に浮上する。生産の自動化では三菱重工、川崎重工業、SUBARUと技術協力する。三菱重工はファナックと組み、機体の組み立て工程などで自動化を進める。川重も自社のロボット技術を航空機生産で本格導入。あらゆるモノがネットでつながる「IoT」や人工知能(AI)も取り入れ、航空機の生産自動化を共同で進める。
日本の航空機産業は戦後、GHQの政策によって航空機製造が7年間禁止されたために航空機の開発競争に出遅れ、自動車のように完成品をまとめる世界的なメーカーが育っていない。
機体の構造部品やエンジンでは存在感を高めてきたが、電装品などの装備品の育成が新たな課題として浮上している。新しい技術革新を機に日本勢は次世代航空機の開発への関与を強め、将来の日本の航空機産業基盤の強化につなげる。(星正道)