「北朝鮮は敵」の表現削除 韓国が国防白書
日本は「近い隣人」
【ソウル=恩地洋介】韓国国防省は15日、文在寅(ムン・ジェイン)政権で初となる「2018国防白書」を公表した。北朝鮮を「敵」と位置づけていた従来の表記を削除。レーダー照射問題で対立する日本との関係を巡っては北朝鮮の脅威に対処する協力の必要性に触れず「自由民主主義の価値を共有する」としていた従来の表現を削った。南北融和を最優先する文政権の姿勢を映した。
韓国は国防白書を隔年で編さんしている。朴槿恵(パク・クネ)前政権当時の16年版は北朝鮮との関係を「北朝鮮の政権と北朝鮮軍は我々の敵」と明記していた。今回は北朝鮮や特定の国を名指しせず「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かす侵略勢力を敵とみなす」と変更した。
北朝鮮との関係を巡っては盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が北朝鮮を敵ではなく「直接的な軍事脅威」と呼んだ。その後、軍事的対立が再燃し、保守の李明博(イ・ミョンバク)政権から再び敵として扱われた経緯がある。南北は18年11月から軍事境界線付近の敵対行為を全面禁止している。白書は「南北間の緊張緩和と信頼構築の基盤ができた」ともうたった。
日韓関係を巡る記述も変わった。16年版は「自由民主主義と市場経済の基本的な価値を共有」と定義していたが、今回は「地理的、文化的に近い隣国で、協力していかなければならないパートナー」という表現に改めた。日本政府も15年の外交青書で「基本的価値を共有する」との文言を落とし「最も重要な隣国」と位置づけるにとどめた。
日韓の安保協力に関しては16年版にあった「北朝鮮の核・ミサイルの脅威」という記述を削除。安保協力の優先順位で、中国との協力を日韓協力に先立たせた。
北朝鮮の核能力に関する言及は16年版と同じだった。核爆弾の原料となるプルトニウムは約50キログラム、高濃縮ウランを「相当量」保有していると指摘。核弾頭の小型化能力を「相当な水準に達したとみられる」と評した。米本土に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)は「弾頭の大気圏再突入技術を確保しているかについて追加の確認が必要だ」と指摘した。