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けがしても休めぬ 稀勢の里追い詰めた使命感

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大相撲の横綱稀勢の里が引退を決断した。2017年1月の初場所で悲願の初優勝を果たして横綱に昇進、翌3月の春場所もけがを抱えながら22年ぶりの新横綱優勝を飾った。新時代の扉が開いたかにみえたが、そこから8場所連続休場するなど2年間で成績は急降下した。引退に追い込まれた背景には何があったのだろうか。

成績が低迷した一番の要因は、言うまでもなく左大胸筋と左上腕のけがだった。全勝で迎えた17年春場所13日目。横綱日馬富士に鋭く潜り込まれて土俵下に落とされ、左胸付近を押さえながら動けなくなった。それでも14日目と千秋楽を強行出場、千秋楽は左腕が使えないなか、本割と優勝決定戦で大関照ノ富士を下して、奇跡ともいえる逆転優勝を飾った。けがを押して出場した本場所の相撲は、左腕をほとんど使っておらず、故障を悪化させたようには見えなかった。となると、その後の対応で狂いが生じたように思える。

けが直後の4月の春巡業こそ全休したものの、5月の夏場所は出場を決めた。そこから本場所に出ては途中休場を繰り返す、負の連鎖が始まった。数多くのけがを乗り越えて38歳まで現役を続けた元大関魁皇の浅香山親方は「けがは(力士にとって)つきもので、みんなすること。けがとどう向き合うかでその先の人生が変わる」と指摘したうえで、こう続ける。「稀勢の里は徹底してけがを治し、稽古をしっかりできるようになってから本場所に出るべきだった。試す場もないまま本場所に出たように見えたし、結局場所に出ても中途半端に終わった。横綱だから番付も落ちない。半年くらい堂々と休めばよかった」

稀勢の里が横綱に昇進するまでの15年間で休場はわずか1日だけ。大きなけがと向き合う経験値は乏しかった。かつて腸捻転を患ったときには、水も食事もとれないなか、入院先の病院から本土俵に立ち続けたこともある。稀勢の里の頭の中に、そもそも休場の選択肢がなかった可能性もある。また、けがの直後は稀勢の里フィーバーが巻き起こっており、横綱昇進披露宴も5月の夏場所前に盛大に行われた。稀勢の里も「(ファンに)巡業で見せられなかった分、本場所でいい姿を見せたい」と語っていた。休むに休めない状況で、本場所に出場しながら治す考えだったのかもしれない。

故障箇所が左腕というのも致命的だった。稀勢の里の代名詞は強烈な左のおっつけ。かつては横綱白鵬を一撃で横に向かせるほどの威力を誇ったが、けがの後は強烈なおっつけは影を潜めた。左からの攻撃の幅は狭められ、事実上、左は差すだけとなった。右からの攻めは親方衆から再三指摘されているように、課題が山積している。対戦相手からすれば、左おっつけは頭に入れる必要がなく、右脇をがっちり固めて左差しを封じさえすればよかった。初場所初日に稀勢の里に勝った御嶽海が「そこ(左差し封じ)だけを意識してやった」と語ったように、対戦相手は次々と右からおっつけ、横綱が頼みとした左を徹底的に殺した。相撲を研究し尽くされているのは否めなかった。

けがを機に"モデルチェンジ"を図ってもよかった。過去には、横綱千代の富士が肩の脱臼を機に強引な投げ技などを改め、素早く左前みつを引く形で優勝を重ねた。稀勢の里は横綱に昇進する前は左四つ右上手という一つの形で白星を並べたが、もともとは突き押し相撲だった。入門時から兄弟子として稀勢の里に胸を出し、独立して部屋を興した後もずっと目をかけてきた西岩親方(元関脇若の里)が言う。

「稀勢の里がなぜ、17歳で十両に上がって、その後大関、横綱に上がったかといえば、押しという武器があったから。それを身につけさせたのが先代の師匠(故・鳴戸親方=元横綱隆の里)。入門したころから、まわしを取った左四つの稽古はさせず、徹底的に押しを身につけさせたことでどんどん伸びていった」

「夏巡業でも、『稀勢の里は押しがあったから横綱になれた。俺はまわしを取ったら力は出るけれど、押しがなかったから関脇で終わった。その違いなんだよ』という話をした。稀勢の里とは何千番、何万番やったかわからないが、それだけ稽古してみて、稀勢の里の一番の長所は何かといったら決して左四つではない」

この初場所の番付発表記者会見で、相撲を何か変えるかと問われた稀勢の里は「もう一度いいときを思い出してやっている」と強調した。突き押し相撲から、左四つ右上手の四つ相撲を磨いて、横綱にまで上り詰めたという自負もあったに違いない。自分の相撲を信じ、土俵に上がったが、復活はかなわなかった。けがを境に、稽古でのし上がってきた横綱の稽古量もぐっと落ちたように思う。一つのけがで全ての歯車が狂ってしまった。「たら・れば」の話が禁物であることは承知のうえで、それでも、あのけががなければ、けがの後の対処が違っていたら、と思わずにはいられない。それほど魅力のある横綱だった。

(金子英介)

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