企業年金利回り7年ぶりマイナス 18年、株・債券安で
企業年金の運用が悪化している。2018年の主要年金の平均運用利回りはマイナス3.13%と7年ぶりのマイナスになった。米中貿易摩擦や世界景気の減速懸念を背景に、年末にかけて急速に株安が進み、債券を含めた主要な金融資産のリターンが軒並みマイナスになったのが響いた。運用利回りの悪化が続けば企業業績の押し下げ要因となる。
格付投資情報センター(R&I)が「確定給付型」の主要約100企業年金を対象に集計した。合計の運用資産規模は約8兆円。確定給付型では将来の年金給付額を約束し、運用実績が予定した利回りを下回った場合は企業が追加で資金を拠出しなくてはならない。
18年11月までの実績値に12月分の推計値を加えた暦年の運用利回りは、東日本大震災があった11年以来7年ぶりにマイナスになった。
特に運用成績の悪化が目立つのが米中貿易摩擦の悪影響に懸念が広がった年後半だ。18年10~12月の利回りはマイナス4.09%とリーマン・ショックが起きた08年以来、10年ぶりのマイナスだった。
この間、国内外の株式がともに約2割下落。運用資産の5分の1を株式に振り向け、新興国株投資にも積極的な大和ハウス工業は「同時株安が響き、円高によるマイナス分も大きかった」と振り返る。
通常、株安時には価格が上昇する債券投資でも18年はリターンを確保しづらかった。年央まで米国をはじめ主要国が相次いで利上げに踏み切ったため債券価格が下落。資産の6割を国債や社債で運用する東京ガスは「米金利上昇の影響が大きかった」と説明する。
年金の運用実績が計画を下回った際に発生する「積み立て不足」は、上場企業の合計で17年度に3兆69億円。10年前の5分の1まで減っていたが、今後の運用環境次第では再び不足分が膨らみ企業業績の重荷となる恐れがある。積み立て不足は各企業が平均約10年かけ費用計上する必要があるため、利益圧迫要因となる。