ファーウェイ社員ら2人逮捕 ポーランド、スパイ容疑
【ウィーン=石川潤、広州=川上尚志】ポーランド当局が中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の中国人幹部ら2人をスパイ容疑で逮捕したことが11日分かった。地元メディアなどによると、当局はファーウェイの現地事務所などの家宅捜索にも踏み切った。米国などの西側諸国がファーウェイの活動への疑念を一段と強め、中国との新たな火種になる可能性がある。
拘束されたのは、ファーウェイの中国人幹部とポーランド人の元情報機関幹部の2人。詳しい容疑は明らかになっていないが、両者とも中国の情報機関のためにポーランドに対するスパイ活動をしていた疑いがある。有罪なら最大で10年の禁錮刑を科される可能性がある。
報道によると、中国人幹部はファーウェイ現地法人の販売部門担当で、以前にはポーランドの港湾都市グダンスクにある中国領事館に勤務していた。当局はポーランド人が勤務していた仏通信大手オレンジの現地事務所なども捜索し、資料を押収したという。
ファーウェイはポーランドで幹部が逮捕されたとの報道を受け「事実確認中で、現時点では何もコメントはない」との声明を11日発表した。「事業を展開している国で適用されるあらゆる法律と規則を順守しており、すべての従業員に対しても順守を求めている」などと主張している。
ポーランドでは保守政党の「法と正義」が政権を握り、強権主義的な政治を進めている。伝統的にロシアに対する警戒が強く、安全保障を中心に米国への依存を強めてきた経緯がある。これまでも、トランプ米政権寄りの姿勢を示してきた。
ファーウェイを巡っては、2018年12月にカナダの当局が創業者の娘で副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟氏を逮捕したばかり。米国が経済制裁を科すイランに対し、ファーウェイが製品を違法に輸出した疑いがあるとして、米当局が孟氏の拘束を要請していた。
その後、中国はカナダ人の元外交官を拘束するなどの対抗措置をとり、米国など西側諸国と中国との対立が激しくなっている。今回の逮捕で中国は態度を一段と硬化させそうだ。
米国は中国がファーウェイなどの製品を経由して、情報を盗み出している恐れがあると懸念する。18年8月成立の19年度国防権限法では、米政府機関や取引企業がファーウェイの製品を使うことを禁止。米国は中国の通信機器のリスクに関する情報を日本などの同盟国に伝え、対応を求めている。