ハンド女子・大体大が金星 社会人強豪に競り勝つ
番狂わせは常に見る者の興奮を呼ぶ。今年の箱根駅伝は総合5連覇を狙った青学大が2位。往路を制した東洋大、逆転で初の総合優勝を果たした東海大という"伏兵"の奮闘と、王者のまさかの苦戦が歴代最高の平均視聴率(関東地区で2、3日とも30%超)につながった。
学生同士の番狂わせがこれだけ関心を呼ぶのだから、年代が異なるチーム間のそれはがぜん盛り上がるというもの。そんな「小よく大を制す」を地でいったのが、2018年12月に行われたハンドボール日本選手権女子の大阪体育大だ。
出色だったのが2回戦の広島メイプルレッズ戦。昨季日本リーグ2位の強豪を相手に一歩も引かず、後半早々にGKも加わる7人攻撃を繰り出すなどし逆転。その後は2度追い付かれたが、残り1分を切り広島に退場者が出た隙を突き、吉岡紗耶のゴールで19-18と競り勝った。
金星を挙げた大体大は3回戦でも飛騨高山ブラックブルズ岐阜を23-19で下し、格上の日本リーグ勢を連破。準決勝はソニーセミコンダクタマニュファクチャリングに敗れたが、後に優勝したソニーセミコンダクタと25-30の接戦を演じた事実は、三たび日本リーグ勢を苦しめた証しとして喝采を呼んだ。
中央に位置するセンターバックの相沢菜月、その両脇を固めるライトバックの中山佳穂、レフトバックの山本真奈らがめまぐるしく動いて相手の守備網に穴を開ける攻撃が持ち味だ。
170センチ超の長身から力強いロングシュートを放つ中山、巧みな身のこなしでシュートコースをこじ開ける服部沙紀ら各年代の日本代表を多く抱えるチームは18年まで全日本学生選手権6連覇。日本選手権では相手のボール保持者の前に素早く壁をつくってゴールエリアラインに近づかせない守備力も光った。
社会人チームを次々撃破しての4強に、4年生の戸阪麻友は「チームとして4年間やってきたことが出せた」。2年生の中山は「ロングシュートの確率を上げるのが目標。ポストプレーもうまくなりたい」とさらなる上位進出への意欲を表した。
今月3日に行われたアメリカンフットボールの日本選手権、ライスボウルは富士通が関学大に圧勝し、社会人代表が10連勝。実力差の拡大は顕著で、同じく格差が広がっているラグビーは社会人と学生の王者が戦う仕組み自体が消滅した。そんな中、ハンドボールは学生による番狂わせの余地が少なからず残されている数少ない競技。大体大は来季、一層の大物食いをモチベーションに戦うことだろう。
(合六謙二)