FRB議長、利上げ一時停止強調 「資産かなり小さく」
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日の講演で「懸念は海外経済だ。市場も不安視しており、政策は様子見する時期だ」と述べた。FRBは2019年に2回の利上げを想定してきたが、株安を受けて一時停止する考えを改めて示唆した。市場はFRBの資産圧縮も注視するが「保有資産はかなり小さくなる」と述べ、当面継続する姿勢を示した。
パウエル氏はワシントン市内で質疑応答形式の講演に臨んだ。米経済については「失業率は約50年ぶりの水準に改善し、19年に入っても底堅さを保っている」と強調した。ただ、金融資本市場は世界景気の先行きを不安視しており、パウエル氏も「最も懸念するのは海外経済だ」と指摘。中国景気など経済指標を丹念に分析すると強調した。
FRBは18年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、19年も年2回の利上げを継続する方針を示したが、パウエル氏は「政策見通しはFOMC参加者の中央値にすぎず、金融政策にあらかじめ決められた経路はない」と強調した。FOMC後に強まった市場の混乱を懸念して「経済動向を見極めるため、政策も柔軟に見直して様子見する時期だ」と述べた。
金融市場はFRBが利上げと同時に進める保有資産の圧縮にも注視している。パウエル氏は「資産規模は現時点よりもかなり小さくなるだろう」と述べ、当面は「量的引き締め」を続ける考えを示した。今月4日の講演では「現時点で市場の混乱の要因になっているとは思わないが、問題が発生すれば、バランスシートの正常化も修正をためらうことはない」と述べていた。
10日にはニューヨーク市内でクラリダ副議長も講演した。パウエル議長と同じく海外経済の鈍化と金融市場の混乱を懸念して「経済指標がどう推移するか、FRBは様子見する余地がある」と主張した。クラリダ氏はさらに「持続的に2%の物価上昇率を保てるか不透明だ」とも述べ、今後の追加利上げには極めて慎重な姿勢ものぞかせた。