北島康介さん、スポンサーと「東京」盛り上げる
経営者として五輪に挑む(6)
都水協から「名前を冠した大会をしたい」という話を頂いたのが始まりです。生まれも育ちも東京、恩返しできたらいいなと思った。子供から日本代表まで参加でき、外国選手も出場できる大会を作りたかった。
強い選手の名前を知るだけでなく、もう一歩踏み込んだ見方を知ると、もっと東京五輪を楽しめる。多くの人に関心を持ってもらえるよう、CGを使ってプールに光を差し込みたい。これからの時代、いろんな面白いことができそうです。今は体を張るくらいしかできないものの、スポンサーとのレースは年々盛り上がっています。
ここ数年、オフシーズンの大会は劇的に増えた。選手たちが同じ仲間と同じプールで1万メートル泳ぐ毎日は、肉体的にも精神的にもしんどい。日々どう乗り切るか考えている。ある意味、試合より苦しい。試合は一瞬、そんな日常から脳みそを解放できるし、試合をこなすことで本番で力を出すコツもつかめる。運営側としては、「北島康介杯」を、選んでもらえる大会、子供が出たいと思う大会にしないといけない。日本記録に10万円、世界記録に100万円、大会MVP(男女各1人)に50万円の賞金を出しています。
早くも有力選手を「金メダル候補」と盛りあげていますが、騒ぎすぎです。東京五輪のレベルが見えてくるのは今夏以降。競泳で金となると、そう甘くはないと現場は感じていると思う。我が社の五輪金メダリスト、萩野選手ももがいています。ですが、そろそろ東京でどんな泳ぎをするのか、そのイメージを具体化させていることでしょう。
平井伯昌コーチの下にいると僕と比べられて鬱陶しいはず。全力でサポートしますが、スタート台に立ったら誰の力も借りられない。最終的には僕らも「おまえ、頑張れよ」というしかない。その点、選手は孤独です。今は注目されて笑顔の選手も、五輪が近づくにつれ、そうもいかなくなるはずです。
今、五輪の運営で様々な意見が出ています。主役は選手ですが、大会を盛り上げ、選手が活躍しやすい環境づくりにスポンサーの力は欠かせません。最初に僕を引っ張り上げてくれたスポンサーと共に、一役買いたい。
「4年遅く生まれれば(自分も挑戦)」と思ったこともある。それは一瞬、故郷に五輪が来るうれしさで悔しさは吹っ飛んだ。五輪はマジですごい。冷めた目で見ている人ほどのめり込むと思います。=おわり