元徴用工判決の政治問題化「賢明でない」 韓国大統領
【ソウル=恩地洋介】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日午前、大統領府で年頭の記者会見に臨んだ。韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工への賠償を命じる確定判決を出したことについて「韓国は三権分立の国で判決は尊重せざるを得ない」と話した。「日本は判決に不満があったとしても『仕方がない』との認識をもつべきだ」と述べ、日本政府に判決を受け入れるよう事実上要求した。
日本政府は9日、1965年の日韓請求権協定に基づく政府間協議を韓国政府に要請したが、文氏は韓国側の対応には言及しなかった。
文氏は直近の日韓関係の冷え込みについて「過去の不幸な歴史が原因だ。日本政府はもう少し謙虚な立場をとるべきだ」と強調。徴用工問題について「日本の政治指導者が政治的な争点とし、問題を拡散させているのは賢明ではない」と批判した。日韓両国が問題解決に向けて「互いが知恵を出し合うことが重要だ」とも話した。
訴訟への対応策を示す時期を巡っては、朴槿恵(パク・クネ)前政権が元徴用工裁判の先送りを大法院に働きかけたとされる疑惑の捜査を見極めてから判断する考えを示した。
会見では南北の経済協力にも言及した。鉄道や道路の連結などに関して「韓国経済の新しい活路になる」と述べ、推進に意欲を示した。2回目の米朝首脳会談や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長のソウル訪問が「遠くない時期に開かれる」との見通しも示した。
南北経済協力では稼働が中断されている開城工業団地や金剛山観光事業の再開に期待を示した。金正恩氏は1月1日の新年の辞で、両事業について「前提条件や対価なく再開する用意がある」と言及していた。文氏は「大変歓迎する。北朝鮮との間で解決する課題は解決した」と応じた。
ただ、米国は北朝鮮の非核化が実現するまで経済制裁を続ける方針だ。南北経済協力は米朝による非核化交渉の進展が前提となる。