ロシア外務省、駐ロ大使に抗議 平和条約進展期待をけん制
【モスクワ=小川知世】ロシアのモルグロフ外務次官は9日、日本の上月豊久・駐ロシア大使を外務省に呼び、日ロ平和条約交渉を巡る日本側の発言について「1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速させるとした日ロ首脳の合意の本質をゆがめる」と申し入れた。事実上の抗議で、交渉の進展を期待する日本をけん制する狙いとみられる。
ロシア外務省が発表した。モルグロフ氏は「日本に領土の帰属が移行」した場合は北方領土の住民の理解を得ることが必要との主張や、2019年が平和条約問題の「転機になる」との発言を例示。「解決へ独自のシナリオを押しつけようとしている」と述べ、両国の世論に誤った印象を与えていると指摘した。
安倍晋三首相は4日の年頭記者会見で「(ロシア人)住民に日本に帰属が変わることに納得、理解してもらうことも必要だ」などと述べていた。
モルグロフ氏はロシアで平和条約協議の実務を担う交渉担当者。平和条約問題の解決には日本が第2次世界大戦の結果、北方領土がロシア領になったと認めるべきだとのロシアの立場を改めて強調した。在ロシア日本大使館は「会談内容についてはコメントを控える」としている。