18年の対ベトナム海外投資実行額、過去最高更新
【ハノイ=大西智也】ベトナム政府は2018年に同国で実行された海外直接投資(FDI)が前年比9.1%増の191億ドル(約2兆600億円)に達したと発表した。6年連続で過去最高を更新した。ベトナムは東南アジア主要国で最高水準の実質成長率を続け、外資を呼び込んでいる。米中貿易戦争が長引けば、中国からの生産拠点の移転も一段と増えそうだ。
トランプ米政権による対中制裁関税の発動を受け、縫製業を中心に中国からベトナムに生産拠点を移す動きが目立ってきた。みずほ総合研究所は米中貿易戦争でベトナムがアジアで最も大きな経済面での好影響を受けると分析。実質成長率を0.5ポイント程度引き上げる効果を見込んでいる。
FDIの認可額は前年比1.2%減の354億ドルにとどまった。前年比減は4年ぶり。17年は中部や南部地域で巨額投資となる大型の火力発電設備が認可された。その反動が出た可能性がある。
国・地域別の認可額のトップは日本(85億ドル)で2年連続。2位は韓国(72億ドル)だった。3位以下はシンガポール、香港、中国と続いた。
18年に認可された主な案件は住友商事が参画する首都ハノイ市のスマートシティー(環境配慮型都市)、北部ハイフォン市での韓国LGグループの液晶関連やカメラ分野への投資計画など。ベトナムは北部で中国と接するため、同国を含めた広域経済圏が形成されつつあることがうかがえる。
ベトナム政府統計によれば、同国の18年の実質成長率は7.08%。総輸出の約25%を占める韓国・サムスン電子など外資系企業の貢献が大きい。みずほ総研の松浦大将エコノミストは「持続的な経済成長のためには、外資依存をどこまで変えられるかが今後の課題」と指摘している。
ベトナムの人口は1億人弱。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国ではインドネシア、フィリピンに次ぎ3番目に多い。ハノイや商業都市の南部ホーチミンなどの大都市圏では中間所得層が厚みを増している。
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