韓国地裁、新日鉄住金資産差し押さえ決定 徴用工訴訟
【ソウル=山田健一】韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金に賠償を命じた元徴用工訴訟で、韓国の大邱(テグ)地裁浦項支部が、原告側の代理人が申請していた同社の韓国内資産の差し押さえを認める決定を下したことが8日、分かった。原告側の代理人によると決定は3日付。韓国鉄鋼大手ポスコと設立した合弁会社で新日鉄住金が保有する約234万株のうち、一部原告への賠償額に相当するとみられる約8万1千株が対象となる。
新日鉄住金は決定に対して異議申し立てができる。実際に資産の売却に至るかやその時期は不透明だが、韓国の裁判所が具体的な司法手続きに入ったことで日本政府が反発するのは必至だ。日本の海上自衛隊の哨戒機に対するレーダー照射問題などで冷え込んでいる日韓関係の一段の悪化が懸念される。
原告側は新日鉄住金とポスコとの合弁会社に地裁が決定を知らせる文書を送付中だと明らかにした。原告側は文書が同社に届くと新日鉄住金が保有する合弁会社の株式を売却できなくなると主張している。
一方、原告側は差し押さえた株式を賠償金とするために必要な裁判所への売却命令の申し立ては控えている。ただ8日の声明では新日鉄住金が賠償金の支払いに向けた話し合いに応じない場合「資産の売却命令を申請せざるを得ない」との立場を示した。
韓国最高裁は2018年10月に新日鉄住金に対して4億ウォン(約4千万円)の支払いを命じる確定判決を出した。原告側は同社に協議を申し入れたが実現しなかったため、18年12月末に地裁に資産の差し押さえを申請していた。
新日鉄住金は8日、最高裁からの通知が届いていないとしたうえで「日本政府と協議して適切に対応する」とコメントした。