米中次官級協議、貿易歩み寄り模索 構造問題はなお溝
【北京=原田逸策、ワシントン=鳳山太成】米中両国政府は8日、北京市内で2日目の次官級の貿易協議を開いた。米国産の農産物やエネルギーの輸入拡大では交渉が進んだ可能性がある。双方は月内にも閣僚級協議を開き、交渉期限である3月1日に向けて歩み寄りを探るが、知的財産権の保護や中国の国有企業への補助金など構造問題を巡る両者の溝は深い。
協議は7~8日を予定している。直接協議は2018年12月の首脳会談後では初めて。米側は米通商代表部(USTR)のゲリッシュ次席代表が率い、農務省やエネルギー省の高官が参加した。中国側は王受文商務次官が代表団を率いた。
協議では中国側が首脳会談で提案したとされる1兆2千億ドル(約130兆円)の輸入拡大策の具体策を話し合ったようだ。輸入の時期や品目を詰めたとみられる。中国も追加関税の引き上げを回避できるならば、輸入拡大に前向きだ。米中両政府は詳細を明らかにしていないが、トランプ米大統領は8日、協議は「非常に順調に進んでいる!」とツイッターに投稿した。
トランプ米政権は昨夏、142項目の要求を中国側に提出。うち4割は米中が合意しやすい項目とされ、米国産の大豆や液化天然ガス(LNG)の対中輸出拡大による貿易赤字の削減も含む。
米政府関係者によると「歩み寄りやすいテーマで中国と部分合意し、難しい構造問題は協議期間を90日間など延ばして協議を続ける案がトランプ政権内にある」という。ロス商務長官は7日の米CNBCのインタビューで「当座の通商問題はおそらく最も簡単に解決できるだろう」と語った。
中国側も楽観的な見通しを示す。魏建国元商務次官は「米中が貿易協議で合意に達する可能性は高まっている」とみる。
一方、構造問題での譲歩には中国も慎重だ。
米国が批判する国家主導のハイテク産業育成策「中国製造2025」も全面的な見直しには後ろ向き。習近平(シー・ジンピン)国家主席も18年12月の演説で「改めるべきでないものは断固改めない」と強調した。魏氏は「国家主権、インターネットを含む国家安全、エネルギーと食料の安全、発展する権利は交渉の対象にしない」と話す。
米中は次官級協議を終えれば、閣僚級に格上げして交渉を加速する。ワシントンで月内にも開く方向で調整しており、習氏側近の劉鶴副首相が訪米する方向だ。
米中は首脳会談で19年1月1日に中国製品2千億ドルへの追加関税を10%から25%に上げることを見送る一方、3月1日を期限とする協議を始めることで一致した。協議がまとまらなければ米国は追加関税を25%に上げる構えをみせている。