傷つく野外コウノトリ最多 17年度19羽、人工物原因
野外に生息する国の特別天然記念物コウノトリのうち、2017年度に防鳥獣ネットや電線などの人工物が原因で19羽が傷ついたり死んだりし、05年の放鳥開始から最多だったことが7日、分かった。兵庫県立コウノトリの郷公園(同県豊岡市)の調査で判明した。日本各地で140羽以上が生息し野生復帰が進む中、安全な環境づくりが課題に浮かんだ。
同公園の松本令以獣医師は「同じ大型鳥のワシが生息する北海道では、産官学が協力して対策を取っている。コスト面など課題はあるが、コウノトリを死なせないための環境づくりを各地で考えてほしい」と話す。
調査は、野外で救護されたり、死骸で回収されたりしたコウノトリを年度ごとに集計。人工物や、ハンターによる誤射も含めた人間の活動に起因するのは、05~16年度が0~7羽。生息数拡大を背景に増えており、17年度は19羽に急増した。
05年度から18年度途中までの累計は50羽。原因別では田畑の周囲の防鳥獣ネットやひも、電気柵に引っかかったのが21羽と最も多かった。次いで送電線や鉄塔への衝突が19羽だった。法律で禁止された野生動物捕獲用のわなに捕まった例もあった。
対策として、ネットやひもに絡まないようにフェンスに替えることや、電線に目立つカバーを取り付けて衝突を防ぐことを想定。今後も有効な対策を研究する方針だ。
北海道電力によると、電線付近に大型鳥用の「止まり木」を設けて感電を防止する対策が効果を上げている。
国内の野生のコウノトリは1971年に絶滅したが、旧ソ連から提供を受けて豊岡市で飼育繁殖させ、野外放鳥につなげた。2017年6月に野外個体数が100羽に到達。近年は兵庫県以外でも、徳島県鳴門市や島根県雲南市、京都府京丹後市で自然に繁殖してひなが巣立ったことが確認された。〔共同〕
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