大谷翔平や大坂なおみ、世界に羽ばたく若い大器
豊かな才能 続々と
大谷の規格外の能力はベースボールの本場をも驚かせた。オープン戦では投打に振るわず、懐疑の目でみられたが、打撃フォームを修正するなど持ち前の適応力で開幕後は大活躍。マウンドに立てば時速100マイル(160キロ)の快速球とフォークボールで大リーグの強打者をねじ伏せ、バットをもてば大きなホームランをかっ飛ばした。現代野球の常識を覆し、日本人ではイチロー(マリナーズ)以来17年ぶりとなる新人王に選ばれた。
右肘を痛めて一時は戦列を離れ、10月にはメスを入れた。二刀流復活は2020年とみられ、来季は打者に専念する。一流大リーガーにも引けを取らないパワーを証明した大谷だが「(日本と)一番違うのは技術。変化しないとついていけない部分が多かった」と振り返る。宿題が多いほど成長するタイプ。伝説はまだ序章にすぎない。
大坂は豊かな潜在能力を開花させた。昨年末のシングルス世界ランキングは68位だったが、コーチを代えたことなどが功を奏し、3月には四大大会に次ぐ格の大会でキャリア初優勝を飾った。8~9月の全米オープンでは日本勢初優勝の悲願を果たし、女子では伊達公子さん以来の世界ランク4位(現在は5位)となるなど躍進を遂げた。
ハイチ出身の父をもつ大坂は身長180センチと体格に恵まれ、ツアーでもトップクラスのパワーが最大の魅力。四大大会通算23勝のセリーナ・ウィリアムズを打ち負かした全米決勝は世代交代を印象づけた。ほんわかした雰囲気と、たどたどしい日本語を交えた正直で、ユーモラスな発言で、日本のお茶の間の人気だけでなく、世界のメディアのハートもつかんだ。オフにはハイチも訪れ、歓迎を受けている。多様化が進む社会にぴったりのヒロイン誕生といえよう。
男子バスケットボールの八村塁(20)もアフリカ・ベナン出身の父を持つバイレイシャル選手。富山県で生まれ育ち、大学で米国に渡った。堂々たる体格と高い得点力は海外勢にも引けを取らない。近い未来のスター候補だ。
19年のドラフト指名が有力視される八村より一足早く、世界最高峰の米プロバスケットボールNBAでデビューを飾ったのはメンフィス・グリズリーズの渡辺雄太(24)。高い守備力が認められて、04年の田臥勇太(Bリーグ栃木)以来の快挙となった。
2月の平昌五輪では、スピードスケートを中心に日本冬季五輪史上最多の13個のメダルを獲得した。羽生結弦(24)による66年ぶりの五輪男子2連覇で幕を開けた今年のフィギュアスケートは12月、16歳の紀平梨花が浅田真央以来13年ぶりとなるグランプリファイナル初出場初優勝で締めた。
ワールドカップ(W杯)ロシア大会の日本代表は開幕2カ月前、西野朗監督に指揮を託した。欧州組を中心に攻めの姿勢を貫くサッカーを展開し、2大会ぶりに16強に進出した。
豊かな才能が世界に羽ばたいた一方、国内では指導者らによるパワーハラスメントや暴力が明るみに出た。日大アメリカンフットボール部、レスリング界、アマボクシング界などに続き、12月には大相撲の貴ノ岩が付け人に暴力を振るい、責任を取って引退した。
1年前には元横綱日馬富士による暴力の被害者になった貴ノ岩が加害者になったことは、角界の根強い暴力体質を印象付けた。
(吉野浩一郎)
2019年は東京五輪に向けた代表選考や準備がいよいよ本格化する。マラソンは9月15日に本番とほぼ同じコースで実施する「グランドチャンピオンシップ」の結果で男女各3枠のうち2人を代表に選出。競泳は7月の世界選手権(韓国)で金メダルを取れば早々に代表が内定する。男女各階級1人ずつしか代表になれない柔道や、女子ダブルスなどで激烈な代表争いが続くバドミントンも世界選手権が大一番。20年1月時点の世界ランキングで代表を決める卓球も勝負の年になる。
本番会場で運営をリハーサルするテスト大会も各地で行われ、6月の近代五種の大会を皮切りに、8~9月の柔道、11月のトランポリンと2つの世界選手権を含む25大会を予定している(12月7日時点)。水泳会場となる東京アクアティクスセンターやバレーボールを行う有明アリーナなど新設会場も年内竣工を目指して工事が進み、メインスタジアムの新国立競技場は11月末完成の見込み。20年元日のサッカー天皇杯決勝がスポーツ大会としてのこけら落としとなる。