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消費税10%へ綱渡り 貿易戦争の影

(2019ニュース羅針盤)

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米中の貿易戦争という景気への逆風が吹く中で10月に消費税率が10%に上がる。バラマキ色が強い対策で景気と参院選という剣が峰を乗り越えて増税にこぎつけ、さらに「ポスト10%」の議論も進めて超高齢社会を乗り切る算段を立てられるか。

◆リーマン級ショックで凍結論再来の可能性

「8%から10%に2%引き上げる予定です」。昨年10月15日、安倍晋三首相は臨時閣議で消費増税対策の検討を指示した。その数日前に首相官邸内で詰めた首相発言の原案には「予定」の2文字はなかった。「『引き上げる予定』がいいんじゃないか」。首相との打ち合わせが終わった後にもかかわらず、官邸で影響力のある高官の一存で付け加えられたのだ。

財務省など霞が関の官僚には「官邸はまだ見送りの余地が残したいのか」と衝撃が広がった。財務省幹部は「歳出をケチらずに、増税の環境整備のためにやれることはなんでもやれという意味だろう」と受け止めた。

景気の腰折れは政権運営に直結する。14年4月に消費税率を8%に引き上げた後は急激に消費が落ち込んだ。これを経験した首相はその後に2度の増税延期を決断した。今回は増税前の夏の参院選を意識せざるを得ない。

政府内では増税対策が急ピッチに進んだ。財務省の太田充主計局長らは「効果がある対策はなんでもやる」とカジを切った。費用対効果の検証がないまま予算がかさむ政策がならぶ。財政再建の旗振り役のはずの財務省も悲願の消費増税の実現には従うほかない。

中小店でキャッシュレス決済した際のポイント還元。首相の鶴の一声で還元率は5%になった。当初は増税分の2%を消費者に戻す発想だったが、5%で「実質減税」になる。購入額に一定額を上乗せして買い物できるプレミアム付き商品券も配布対象を拡大。低所得者に加え、公明党主導で2歳以下の子育て世帯にも配られる。

自民党の提言でマイナンバーカードを使って買い物できる「自治体ポイント」を付与する制度もできることになり、防災・減災のための公共事業もなぜか「消費税対策」として積み上がった。

「増税のための歳出膨張」という矛盾した状況だが、官邸、自民党、公明党の三位一体の圧力に「金庫番」であるはずの財務省は沈黙した。社会保障の抜本改革も見送られ、19年度予算案の当初予算で初めて100兆円を突破した。

省内には「参院選前に社会保障改革の具体論や消費税率10%超への議論ぐらい始めたい」との声もくすぶる。だがその前提となる「10%」の実現にも危うさは残る。

世界経済には減速観測が強まり、今後、米中の貿易戦争が一段と過熱していけば日本の景気にも暴風雨が吹きかねない。そうなれば「リーマン級」の景気ショックを理由にした増税凍結論が再び頭をもたげる可能性もある。

将来に借金をツケ回しする悪弊を断ち、高齢化を乗り切る道を描けるか。19年はこれが求められる1年になる。(坂口幸裕)

◆プロの読み 慶応大学経済学部教授 土居丈朗氏

一時的な消費落ち込みより世代間格差が深刻

2019年度予算案は消費税率を10%に引き上げるために、なりふり構わず対策を積み上げた。安倍晋三首相が消費増税を見送るぐらいなら、大盤振る舞いの対策をとった方が財政的にマシだと判断したのだろう。

ただ増税での一時的な消費の落ち込みよりも借金の増加に伴う世代間格差のほうがよほど深刻だ。増税対策を盛り込んだ予算案を閣議決定したからには(こうした問題の改善に向け)10%への増税はもう引き返せないはずだ。

(消費税率を10%に上げたとしても)借金でクビが回らなくなる時期は近づいている。金利が3~4%になれば利払い費が相当増え、社会保障費などのやりくりに苦しめられる可能性がある。

社会保障は年齢でなく能力に応じて負担すべきだ。年齢によって負担割合を決めるのはおかしいと多くの国民は気づき始めた。抜本改革は夏の参院選後になりそうだが、大きな方向性だけでも選挙前に示すべきだ。

消費税率を10%超にする議論は10月に増税した後ならやりやすくなる。まずは医療・介護の自己負担率の引き上げや給付抑制が検討課題になり、そのうえで足りない財源として次の消費増税という流れだ。こうした論議に1~2年はかかる。首相は興味がないかもしれないが、せめて議論ぐらい始めてほしい。ポスト安倍をねらう政治家もビジョンを示すべきだ。

今は有権者に財政健全化の選択肢が示されていない。首相はこだわりがなく与野党も熱心ではない。「財政難に陥る」と主張する政党が出てくれば、首相も何らかの姿勢を打ち出さないといけなくなるはずだが、野党は与党が選挙対策で財政出動しても批判しない。

いまの財政運営で問題なのが補正予算だ。政治的不満のガス抜きに使われており、目の前に選挙があるとルーズに活用する。当初予算と補正予算の全体で歳出をいくらに抑えるか、きちんと決めるべきだ。財務省も消費税を確実に引き上げるためとか、政治と刺し違えようとする迫力もなく、安易に手形を切っている。新元号の時代には補正予算を治外法権のように扱うのはやめたほうがよい。

財政に余裕があった昭和から平成の初めは、政治家は「お金はあるので困った時は言ってきてください」と言えた。しかし、将来世代からの借金に頼っている現在はこうした時代とは異なる。

自民党では若手を中心に社会保障改革の芽が出ている。自分の出番に備えて主張し始めているのはいいことだ。小泉純一郎政権では民間ができることは民間に委ねる「官から民へ」という発想があった。これは今後ますます重要になる。

◆デスクの補助線 総合編集グループ次長 柳瀬和央
将来世代名義の支払いやめよ
 消費増税はなぜ必要なのか。国の財政健全化のため、という説明は間違いではないが、「公正」や「格差是正」といったキーワードを使って考えるほうが分かりやすい。
 消費税率を10%に引き上げるのは高齢化できしんだ社会保障制度を立て直す「社会保障と税の一体改革」の一環だ。この改革で特に重要なのは将来世代へのツケ回しをやめる視点だ。
 膨らむ社会保障の費用は税や保険料では足りず、国の借金で賄っている。いわば小さな子供や将来生まれる世代名義のクレジットカードで医療費や介護費を払っている状態だ。現在のお年寄りはいま生きている世代が支えよう――。こうした現在と将来の世代格差是正が消費増税が必要な本質的な理由だ。
 そして将来世代にツケ回しをしない状態を保つには、高齢者の増加に合わせて税率を10%超に上げる議論も避けがたい。
 ところが現政権は景気への配慮を名目に8%から10%への増税を2度見送った。将来世代の財布に手を入れるのは正義にかかわるような行為だ。それを是正するのに現在世代の懐具合は本来関係ないはずなのに、商品券を配るなど負担を軽くする施策も相次ぐ。失業者が急増するリーマン危機級の景気悪化ならともかく、これでもし何らかの名目で3度目の増税延期をしたら、子孫は我々のことをどう思うだろうか。

〔1月1日付日本経済新聞朝刊〕

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