男子ゴルフ賞金王 今平周吾「米ツアー参戦が夢」
ツアーフル参戦から4シーズン目となった2018年、男子ゴルフの今平周吾(26)はプロ転向8年目で賞金王に上り詰めた。身長165センチは歴代最小。でっかいタイトルをつかんだ「小さなキング」に話を聞いた。
――15年の賞金ランク24位から10位、6位と順調にステップアップしてきたが、賞金王に輝いた要因は何か。
「(ランキング7位から1位になった)パットが一番、急激に変わった。ストロークがインサイドアウトになる悪い癖を直すにはどうしたらいいかを考え、上からダウンブローにクラブを入れる練習を、17年の秋口からやり続け、結果に表れた。ボールの手前にティーを刺し、2ミリほど頭が出たティーをたたかないようにボールを捉える練習をするようになってよくなった。最初に教えてもらったのが谷口徹さん。その練習をしないと悪い癖が出て、安定してクラブが入らなくなる。自分では(パターヘッドを)真っすぐ出しているつもりだけれど、試合のビデオ映像を見ると、外側にフォローが出ていた」。
「パットがうまいと思うのは谷原秀人さん、谷口さん。ストロークに迷いがない人。パーンと打って、緩まない選手がうまいと思う。僕は感覚を重視。メカニカルには打ちたくないので練習器具は使わない。細かいことは気にせず、ストローク軌道だけ安定させたい。(パーキープ率は2位で)アプローチもオフは例年以上に練習量を増やし、簡単なミスが減った」
――技術的な課題は?
「自分の頭で描いているスイングに近づけたい。クラブを振っている中で、イメージしたスイングと、動画で撮ったスイングが一致していないときが結構ある。それを近づけていけたら。トップ位置が高めなのでもう少しフラットに。切り返しで体が前に流れる動きを止めたい。トップを低く、コンパクトにすることで、クラブが体の近くを通りショットの安定感が増すと思う。そのために、ワキを締めるよう意識している」
■「優勝となるとあと10~20ヤード」
――飛距離アップはどうやって?
「トレーニングで肩や股関節の可動域が広がり、スイングアークが大きくなって飛距離も伸びた。ただ、海外の試合に何度か出場したが、一緒に回る選手が自分より断然飛距離が出ている。ハンディだと思う。彼らはアイアンの弾道の高さも高い。僕がピッチングウエッジで出ているような出球の高さを7番アイアンで出す感じ。今の飛距離でも米ツアーである程度やっていけると思うけれど、優勝となるとあと10~20ヤード、平均的に伸ばさないとちょっと厳しいかなと」
「トレーナーからは『体重70キロを目標に』。でも、もともと僕は食べても太りにくい体質で、増えても65~66キロ。シーズン終盤だと63キロくらいに落ちる。『何でもいいから食べろ』といわれ、なるべくたくさん食べるようにしているけれど、全然ダメだった。体重を増やして、昨年以上にトレーニングして筋肉をつけ、柔軟性をアップすれば飛距離は伸びるのではないか、と考えている」
――コーチはつけていない。それでもショットの精度は高い。
「(2年間在籍した)IMGアカデミーでは外国人コーチに習っていたが、プロになってからはずっと一人で。動画を撮って自分で分析する。ゴルフをするのは自分。人の意見よりも、自分が打っている感覚が一番大事。コースを離れても、だいたいゴルフのことばかり考えている。スイングやパットのこと、クラブをどうするか、こうしたほうがいい球が出るのではとか」
「ゴルフを始めたときからずっと、左手の甲をフェース面だと考えてやっている。そのイメージがいいのでは? 僕はもともと左利き。字は右手で書くが、ボールを投げるのは左手。左手の使い方で(スイングを)考えている」
■「東京五輪には絶対に出たい」
――将来の夢、20年東京五輪は?
「両親がゴルフ好きで練習場についていき、8歳でコースデビュー。ゴルフにはまった。小学校の卒業文集には『マスターズ(・トーナメント)に出たい』と書いた。やはり米ツアーにフル参戦するのが夢。海外に行くなら、早いうちに海外のゴルファーを見ておくのもいいかと考え、高校1年の終わりころに渡米した。チャンスがあれば、米ツアーに早く行きたい。(小平智選手のように)海外の試合でいい成績を出していくのが一番の近道かと。入間市(埼玉)で育ったし、霞ケ関CCは地元。知人らと結構回っている。東京五輪には絶対に出たい、という気持ちは強い」
――賞金王になり、全英オープン出場は確定。世界ランクは53位で、昨年の小平選手のようにマスターズ前週までに50位以内に入れば、初挑戦がかなう。今季の目標は?
「テレビで見るマスターズの華やかな雰囲気が好き。(メジャー4大会で)一番でかい大会だと思っている。ソニーオープン(1月10~13日)と(翌週の日本ツアー開幕戦の)SMBCシンガポールオープンに出場。その後も米ツアーに出られれば出たい。ぎりぎりまで50位以内を狙っていきたい。海外での活躍と、3勝以上を目標に、しっかりトレーニングを積んで臨みたい」
(聞き手は吉良幸雄)