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ラグビー日本、スクラム成長に細部へのこだわり

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2019年のワールドカップ(W杯)に向け、ラグビー日本代表の成長が明らかなプレーがスクラムである。選手一人ひとりは小さく、力でも劣るが、日本式の細部にこだわる組み方で堅固な土台を築き上げている。自分たちのボールを確保してスムーズな攻撃につなげるだけでなく、さらにその先も見えてきた。

今秋のテストマッチ3試合。日本はマイボールのスクラムを計21度組んだ。そのうち20度でボールの確保に成功。相手から奪った反則も、自分たちが犯した数より多かった。3試合の相手がW杯2連覇中のニュージーランド(NZ)、世界ランキング4位のイングランド、大型FWのロシアだったから、なおさら値打ちは上がる。

第3戦のロシア戦。圧勝を期した日本だったが、リードを許す想定外の展開が続いていた。3点差の後半24分、自陣で相手ボールのスクラムを迎えた。さらなる失点は許されないシーン。組み合った瞬間、日本は右プロップの具智元の側からぐいと前に出た。対面の選手がたまらず頭を外す。主審はロシアが故意にスクラムを崩したと判断、笛を吹いた。

日本は相手のチャンスを潰したうえで、キックで敵陣に入って攻撃することができた。それ以降は失点せず、逆転勝利に成功している。

勝因は戦前の準備に

攻勢を決定づけたビッグプレーについて、左プロップの稲垣啓太は「単純に押しただけ」。長谷川慎スクラムコーチも「(それまでとの違いは)押しにいったか、いかなかったかだけ」と声をそろえる。つまり、押せば反則を奪える状態をつくった、戦前の準備に勝因がある。

長谷川コーチがロシア戦に向けて作成した、選手への説明資料は約50ページに及ぶ。相手一人ひとりのスクラムの特長も詳しく分析する中、要注意人物に挙げたのが左プロップのモロゾフ。190センチ、118キロの巨漢の武器が変則的なフォームだった。

モロゾフは組み合う前に体をやや外側にずらすことで、対面の選手の体を横から崩し、力の出しにくい姿勢にする。呼応して自軍の逆サイドのプロップが後退。相手のFW第1列の体の間に隙間をつくり、スクラムの崩壊に持ち込むという狙いだった。

日本はモロゾフの対面に入る右プロップ具智元が孤立しないよう、対策を取った。中央のフッカー坂手淳史と左プロップ稲垣が、具に寄り添うような形でサポート。さらに、8人が組むときのスピードを速めることで、モロゾフが横から攻撃する時間的な余裕を奪った。

分岐点となったこのスクラムでも具は強い姿勢を保てた。逆にロシアのスクラムは選手間の結束が弱まり、崩壊につながった。

モロゾフは直後に交代。残り4度のスクラムは日本が圧倒した。「ロシアとは(積み重ねてきた)ディテールが違うから全く怖くなかった。モロゾフがいなくなった後は押しまくることができた」と長谷川コーチ。W杯の開幕戦でも戦う相手に心理的な重圧を与えられた。

試合前にはコーチ陣だけでなく、選手もモロゾフらの映像を見て組み方を分析していた。試合に出ないメンバーは、スクラム練習で相手の各選手の特長をまねて組んだ。チーム一丸でのスクラムの勝利。稲垣は「このレベルの相手なら、狙ってペナルティーを取れるチームに成長した」と胸を張る。

1週間前のイングランド戦でも日本の周到な用意は奏功した。坂手が言う。「欧州のチームは重い。ヒット(組み合う瞬間)で速く当たり、そこから重さを生かして(前に体が)伸びてくるスクラムを組む。だから自分たちが先に当たり、相手に伸びさせないことを意識した」。イングランドが体を伸ばせば、必然的に日本の姿勢は窮屈になる。そうさせないため、速く当たる。

速いスクラムを可能にする細かい技術が、今の日本にはある。組む前から8人全員が足の位置を固定。靴底の突起の前4本を芝に刺すというこだわりは、ほんの一例。100個近いチーム内の専門用語やチェックポイントをもとに、精密機械をつくるようにスクラムを組む。

個々の選手への対策も

ロシア戦と同様、個々の選手への対策も十分だった。先発の左プロップ、ヘップバーンには致命的な弱点があるとわかっていた。組む直前、対面に腕で体重をかけられると足を後ろにずらし、重心を下げる。日本の右プロップ具はその隙に体を伸ばして前進。終始、優勢に組めた。

後半、ヘップバーンに代わって登場したムーンには同じ欠点がないとわかっていた。体重をかけられても重心が後退しない。しかし、具と交代で入ったバル・アサエリ愛はしっかり前に出てからヒットする練習していたため、ムーンに押されず、最後まで主導権を持てた。

「日本代表が外国のチームと組むときに100対100でやったらきついけれど、相手の力を70にする組み方をすればイングランドともやれる」と長谷川コーチ。狙い通りのスクラムを敵地の8万人の観客の前で実現することになった。

イングランドを上回る組織的なスクラムを持つのが、11月3日に戦ったNZだった。組む前の体勢を取るスピードが速く、8人のヒットやプッシュのタイミングが統一されている。「日本に似ているから、ディテールでは負けたくなかった」と長谷川コーチは言う。

意識したのはFW第1列がヒットで前進した後、後ろの5人が足を素早く前に運び、強い姿勢に戻ること。後方の選手が遅れると前の3人の体が伸び、力を出せなくなる。スクラム練習の相手を通常の8人から10人に増やし、NZの重さを体感する工夫などを積み重ね、世界最強クラスの相手にマイボールを1度しか失わなかった。

ただ、相手ボールのスクラムでは故意に崩したという反則も取られた。「相手のプロップが頭を下げ、こちらの足元に落ちるように組んできた。日本が引き落としたと判断されてしまった」と長谷川コーチは説明する。

本来は相手の反則になる行為だが、ここに日本の課題がある。「僕は現役時代に(グレーゾーンのプレーを考える)悪い選手だったので、(日本のFWは)みんな真面目やなとは思う」と長谷川コーチ。

テストマッチはきれい事だけではすまない。審判の目やカメラの届かぬところでは、相手を出し抜くためのダーティーなプレーもある。スクラムのように審判でも判断に悩む場面はなおさらだ。虚々実々の駆け引きが日本は得意ではないが、その極限の舞台といえるのがW杯。フェアプレーは大事だが、相手の策略にはまらぬためのたくましさは求められる。

イングランド戦ではこんなシーンもあった。ヘップバーンがムーアに交代した後、最初のスクラム。具は組む前に圧力を受け、やや縮こまった姿勢になった。スクラムは崩れ、日本の反則と判定された。「ムーアの特長はわかっていたけれど、(選手の)代わり際にやられた」と長谷川コーチ。相手の変化への適応が不十分だった。

前半の判定基準なら、イングランドの反則になるプレーでもあった。試合中に激変した主審の笛に対しても、対応が遅れた。

基礎編から応用編へ

課題克服への取り組みは始まっている。スクラム練習中、主審役になる長谷川コーチが突然、判定基準を変える。練習相手となっているメンバーが急に違う形で組む……。基礎ができてきたからこそ挑戦できる応用編。「オールラウンドにアジャストできるように練習している。今はそういう段階に進めている」と長谷川コーチは強調する。

ちょっとぜいたくな悩みも出てきた。3戦を振り返り、「ここまで(日本の狙いが)はまったなら、もうちょっとできたかなと思う」。スクラムの全体的な優勢の割には、相手の反則を誘ったり、トライまで持ち込んだりする場面は少なかった。

イングランド戦の前半、相手ゴール前でマイボールのスクラムがあった。ヒットで押し込んだ後、出てきたボールをCTB中村亮土がランでトライに持ち込んだ。スクラムの一押しで、相手の防御ラインの出足を止めておいたことが効いた。

実は、想定していたシナリオではなかった。狙っていたのはスクラムを押し込み、そのままトライを奪う形。バックスに展開したのは、ボールがこぼれ出たがゆえの次善の策だった。ヒットで前に出られていたことを考えると、そのまま組み続ければどうなっていたか。

海外勢のスクラムはとかくしぶとい。「日本人なら崩れる場面でも、彼らは大きな体と、体幹の力で維持できる」と長谷川コーチは指摘する。

相手をよろめかせた後、どうやって仕留めるのか。日本代表が長期合宿を張る19年は、過去よりもスクラム練習に時間を割ける。もう一段、切れ味に磨きをかけられれば、日本は強力な武器を携えてW杯に臨むことになる。

(谷口誠)

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