20歳の慶大生がキャピタリストに
20歳のベンチャーキャピタリストが誕生した。慶応義塾大学総合政策学部2年の上杉修平氏がベンチャーキャピタル(VC)のアップスタートベンチャーズ(東京・港)の代表パートナーに就任、1億円のファンドを25日から運用を始めた。上杉氏を支援する若手キャピタリストの笠井玲央氏(26)の従来の記録(22歳)を更新し、国内最年少とみられる。
「起業している同世代は多いが、VCをめざしている人はほとんどいない。この分野でトップをめざせる」。上杉氏はVCを志した理由をこう話す。高校時代の2016年3月、慶大で開かれたイベント「VCスクール」で笠井氏に出会い、刺激を受けたのがきっかけという。
笠井氏は独立系VCのインキュベイトファンド(同)で働いた後、当時最年少の22歳でVCのIF Angel(同)を設立した。1億5000万円の1号ファンドは運用開始から17カ月で全額回収し、高い収益を上げているという。
笠井氏は18年、ファッション通販サイト運営のクルーズが設立したVC「セブンウッズインベストメント」の運用者に起用された。総額13億円のVCファンドへの投資を手がけ、上杉氏に1億円の運用を託す。笠井氏は自らの経験を踏まえ、「経験がない若手でも独自の人脈や投資家としての資質があれば、成績を出せる」とみている。
上杉氏は慶大入学後、東京大学の学生が設立したスタートアップのCandle(東京・渋谷)や笠井氏が運営するVCでインターンとして働き、事業と投資実務を経験した。新ファンドでは20代前半を中心とする同世代の起業家を対象に、1社あたり500万~1000万円で10~20社に投資する。慶大生が運営するPoliPoli(ポリポリ)の伊藤和真氏ら同世代の起業家のネットワークをいかし、「優秀な友人が起業したタイミングで投資する」(上杉氏)。ネット通販などサービス系を中心にすでに3~5社への投資を決めているという。
20歳でVCの運用者となるのは世界でも珍しいが、「欧州では22歳で独立し、自分の数倍の資金を運用するキャピタリストもいる」とライバル心を見せる。抱負は「学校や家庭の制約と関係なく、若くして自ら意思決定できる起業家のロールモデルを増やすこと」。起業家を支える投資家の裾野が広がれば、スタートアップの多様化につながりそうだ。
(鈴木健二朗)