海自レーダー照射、韓国に再発防止要求 日韓外務省局長が協議
【ソウル=恩地洋介】外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は24日、ソウルで韓国外務省の金容吉(キム・ヨンギル)東北アジア局長と会談した。日本側は海上自衛隊の哨戒機が韓国海軍の駆逐艦に火器管制レーダーを照射された問題で再発防止を求めた。日本企業への賠償命令が相次ぐ元徴用工訴訟を巡っては、早期の対応を韓国政府に促した。
両局長は韓国外務省で約1時間半協議。日本側の防衛駐在官と韓国国防省の担当者も同席した。日本側がレーダー照射について遺憾の意を伝えたのに対し、韓国側は「事実関係の明確な確認なしに自分たちの立場を主張した」と不満を示した。防衛当局間の意思疎通が重要との認識を確認した。
レーダー照射を巡る日韓の説明は食い違っている。日本は韓国の駆逐艦から分単位の照射を受けたとして「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為」との認識だ。一方、韓国国防省の副報道官は24日の定例記者会見で「日本側に脅威を感じさせる行動は一切なかった」と述べ、意図的に狙って照射したとの見方を否定した。
記者会見では韓国軍合同参謀本部の関係者が、海自機が駆逐艦上空を飛ぶ「特異な行動」を取ったと主張。遭難船を捜すため運用していた追跡レーダーのカメラを監視のため哨戒機に向けたが「この過程で一切の電波放射はなかった」と説明した。レーダー照射の意図を尋ねる哨戒機からの無線交信は、感度が低くほとんど認知できなかったという。
元徴用工問題に関して、金杉氏は協議後、記者団に「様々な意見交換をしたが、韓国側から新しい視点は示されなかった」と述べた。対応策を提示する時期にも言及はなかったという。今後の対応については「韓国政府が検討中で見守りたい」と語った。
韓国は李洛淵(イ・ナギョン)首相を中心に対応策を検討中だが、1965年の日韓請求権協定に基づき韓国側が責任を負うべきだとする日本との溝を埋める案を見いだせずにいる。
日韓の政府高官による協議は、韓国大法院(最高裁)が10月末に元徴用工訴訟で新日鉄住金への賠償命令を確定させてから初めてとなる。
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