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2年連続沢村賞 巨人・菅野にみた「昭和の侍」

編集委員 篠山正幸

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忘れ去られようとしている価値観に執着し続ける選手が、一人くらいいてもいい……。そんな感慨を抱かせたのが、今季10完投、8完封をマークした巨人・菅野智之(29)だった。昭和のレジェンドの名を冠した沢村賞を2年連続で受賞した力投は、その名の通り、昭和の侍の香りを漂わせるものだった。

「満足は一つもしていない」

先発・完投型の投手を顕彰するために設けられた沢村賞の選考基準は厳しい。25登板、10完投、15勝、勝率6割、200投球回、150奪三振、防御率2.50。必ずしもすべてクリアする必要はないというものの、投手の分業化も行き着くところまで行き着いた感のある現代の野球では、夢物語に近い基準といっていいだろう。

菅野はそのすべてをクリアした。28登板、10完投、15勝8敗の勝率6割5分2厘、202投球回、200奪三振、防御率2.14。シーズン8完封は1978年、近鉄・鈴木啓示さん以来40年ぶりで、これも昭和の侍の系譜に連なる大記録だった。

それでも、6億5000万円(推定)という日本選手歴代最高に並ぶ年俸で契約更改したあと「満足は一つもしていない」と語った。来季の目標は20勝に、再び全基準を満たしての3年連続沢村賞受賞という。

シーズンを通して健康体を維持すれば、菅野にとって難しいことではない。しかし、完投数への執着は肩の酷使を招きかねず、リスクを伴う。今季の巨人の場合は、抑えが安定しなかった戦いのなかで、勝つための最善の策として、やむを得ず、菅野に完投してもらったという側面もあった。

10完投はそうしたチーム事情から生まれた数字でもあったが、マウンドを一人で守り切り、最後は捕手と喜び合う、という姿は昔の野球をほうふつさせ、懐かしいものがあった。それはまた昭和から平成、そして平成から次の時代へ、という時の流れの重みを感じさせるものだった。

「投手は先発完投」が当たり前とされた時代は、いつごろから変わったのか。一つの区切りを示す証言が、救援投手という新職種の先駆けとなった江夏豊さんの回顧だろう。

阪神から南海(現ソフトバンク)に移籍して2年目の77年、江夏さんは当時の監督、野村克也さんから「リリーフやらんか」と打診された。

以下は江夏さんの回想。「何言っとんの、このおっさん――。今(2017年)でこそ中継ぎ、抑えでそれなりのサラリーがもらえて、まともな仕事というイメージだけれど、当時は投手といえば先発。完投してナンボ、の商売だった。先発をさせてもらえない投手は二流であり、落ちこぼれだった。――まともな投手はきれいなマウンドに登るもの。俺は救援でガタガタになったマウンドに登板する投手じゃないぞ」

こうして抵抗を見せた江夏さんが、この2年後の広島時代に「江夏の21球」という奇跡の脱出劇を演じたことなどから、救援投手は日の当たる存在になっていった。70年代と80年代の間に、一つの転換点があったとみていいのかもしれない。

分業化の流れは平成時代になってから加速したようだ。平成元年(89年)にはセ・リーグは斎藤雅樹さん(巨人)の21完投を筆頭に、桑田真澄さん(巨人)20完投、西本聖さん(中日)15完投。パ・リーグは阿波野秀幸さん(近鉄)21完投、西崎幸広さん(日本ハム)と渡辺久信さん(西武)が、ともに17完投。

このあたりまではまだ、先発・完投も珍しくはなかったのだが、中盤までのリードを救援専門投手によって守り切る野球が常道となるのに伴って激減。今では菅野のようなシーズン2桁の完投数は希少で、楽天・田中将大(現ヤンキース)の14完投(11年)などは奇跡的な数字といってもいいくらいだ。

自分の理想へ一心不乱にまい進

投手の働きを巡る価値観は大きく変わりつつある。救援陣が安定していることが前提ではあるが、先発は完投を求められないばかりか、6、7回、球数にすれば100球を大きく超えないうちに降りて、次の登板に備えることが、チームとしてはベスト、とすら考えられるようになった。

メジャーでは救援投手を先発させ、まず相手の攻撃を封じてから本来の先発に託す、という「倒置型」の継投パターンすら出てきた。

平成の次の時代の野球はどうなるか。9イニングをどんなタイプの投手にどう振り分けていくか、という研究が進むのは確かだろうし、その分、先発・完投の時代は遠ざかるはず。

だからこそ、流れにあらがうかのような菅野の戦いに注目したい。その投球の気品は古いといわれようが、なんといわれようが、先発・完投という自分の理想を見据え、一心不乱にまい進するところに生まれているものだからだ。

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