中国、積極財政で景気下支え 大規模減税・インフラ積み増し
【北京=原田逸策】中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は21日、2019年の経済運営方針を決める「中央経済工作会議」を終えた。会議は「さらに大規模な減税を実施する」とし、積極財政で内需を拡大する方針を打ち出した。金融政策も緩和気味に運営する方向だ。米国との貿易戦争で経済の下押し圧力が強まるなか、景気下支えに軸足を置く姿勢を鮮明にした。
会議は19~21日に開いた。米国による対中制裁関税の影響が本格化する19年の中国経済は減速が見込まれる。会議は中国経済の現状について「外部環境は複雑で厳しく、経済は下押し圧力に直面している」と率直に認めた。中国政府は来年3月に19年の経済成長率の目標値を公表するが、18年の「6.5%前後」から下げるとの観測が多い。
財政運営は「積極的な財政政策は力を強め、効率を上げる」とした。昨年の会議の「積極的な財政政策の方向は変わらない」から表現を大幅に強めた。減税や手数料下げは18年の約1兆3000億元(約21兆円)を上回る規模にすると明記した。「地方債券は大幅に増やす」とし、鉄道や道路などインフラ投資向け地方債も18年の1兆3500億元から積み増す。
金融政策は「穏健な金融政策は引き締めと緩和を適度にする」とし、昨年の「穏健な金融政策は中立を保つ」との表現から「中立」を削除した。「中立」の表現がないのは中国が政策金利下げを軸に大規模緩和をしていた15年以来で、金融政策でも景気に配慮する方針を示した。
注目されるのは人民元への言及がなかったことだ。昨年は「合理的で均衡ある水準で基本的に安定させる」としていた。言及がないのは中国人民銀行(中央銀行)が元相場の目安となる基準値を切り下げた15年以来。18年も夏以降に元の下落圧力が高まっており、市場の臆測を呼びそうだ。
不動産は「家は住むもので投機の対象ではない」との表現が2年ぶりに復活した。「大都市での不動産販売規制を緩める」(野村証券)という市場の観測を打ち消す狙いがありそうだ。
年明けから本格化する米国との経済協議を意識した表現も目立った。「米中貿易摩擦に穏当に対応した」と自賛し、「(1日の)米中首脳会談の合意を実現するため、経済貿易の交渉を進める」とした。
米国の要求を念頭に「外資の中国での合法な権益、特に知的財産権を保護」「さらに多くの分野で外資単独の経営を認め、輸出入の貿易を拡大する」などと表明した。
一方、「製造業の質の高い発展を推進する。ぶれずに製造強国を建設する」とも強調した。ある商務省関係者は「(米国が批判するハイテク産業政策)『中国製造2025』を着実に進めるとの意味だ」と解説する。