米首都の司法長官、フェイスブックを提訴
情報管理不備で
【シリコンバレー=中西豊紀】米首都ワシントンDCの司法長官は19日、ユーザー個人情報の管理に不備があったとして米フェイスブックを訴えたと発表した。今年に入ってプライバシー保護を巡る不祥事が相次ぐ同社だが、米主要当局による提訴は初めてとみられる。他の州が追随する可能性もあり、フェイスブックは今後巨額の制裁金リスクにさらされることになる。
訴状はDCのカール・ラシーン司法長官名義で、主に今年3月に発覚した英コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカを通じたデータ漏洩を問題視した。プライバシーの保護がなされていなかったとして制裁金やユーザーへの差し止め救済を求める構えだ。
発表資料では、まず2013年に外部の研究者にクイズアプリを使ったデータ収集とケンブリッジ社へのデータ転売を許してしまっていた点を指摘。厳格なデータの保護をうたっておきながらユーザーに誤解を与えたとした。
また外部研究者のデータ収集活動をきちんと監視していなかったことや、複雑なプライバシー設定で結果的にユーザーが自分のデータがどう扱われているか分からなくなっていたことも問題だったと強調。さらにはケンブリッジ社へのデータ転売を15年に気づいておきながら18年まで公表しなかったこと、同社にデータ消去の要請を徹底できなかったことも不適正だとした。
DCでは852人のユーザーしか問題のクイズアプリを使わなかったが、ユーザーの友人データも取得できるようになっていたため、結果的に地域の半数の3万4000人の個人データが外部研究者にわたってしまったという。一違反あたりの民事制裁金の最大額は5000ドルとされ単純計算で最大17億ドルの制裁がフェイスブックに科されることになる。
そのほか、携帯電話端末をつくるメーカーなど特定の顧客との間でユーザーデータを特別に共有していたことも問題視した。
相次ぐ不祥事で市民団体や投資家による対フェイスブック訴訟は起きていたが、主要な政府機関による訴えは今回が初めてのもよう。米ワシントン・ポストはDC以外の他の州でも同様の動きが予定されていると報じている。ケンブリッジ社の事件では米国だけで約7100万人のユーザーが被害にあったとされる。フェイスブックは「訴状を読んだ上で司法長官らと協議する」との声明を出した。
州以外でもすでに米証券取引委員会(SEC)、米連邦取引委員会(FTC)、米司法省がケンブリッジ社の事件を契機にフェイスブックへの調査を進めている。フェイスブックに対しては欧州を中心に当局が厳しい姿勢を取ってきたが、お膝元の米国でも逆風が吹き始めたことで、訴訟負担は今後さらに増しそうだ。
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