泡と消えた?恋人たちの聖夜(平成のアルバム)
赤坂プリンスホテル
「赤坂プリンス押さえとけ スイートとまでは言わないが」。お笑いコンビ、ダウンタウンの浜田雅功さんと歌手の槙原敬之さんが2004年に歌ったクリスマスソング「チキンライス」。松本人志さんが書いた歌詞に出てくる赤坂プリンスホテルは、「赤プリ」の愛称で、バブル期のクリスマスを象徴する存在だった。
聖夜に恋人と泊まる赤プリは若者たちの憧れ。30年ほど前のクリスマスイブを恋人(当時)と赤プリで過ごした大手商社マン(55)は「40階にあったカクテルラウンジ『トップ・オブ・アカサカ』に彼女を連れて行くと喜んでくれた」と遠くを見つめた。
バブル期のクリスマスシーズンは、9月には予約で満室になる盛況ぶり。1泊15万円するスイートルームから順に埋まっていったという。当時、宿泊部門を担当していた大森伸翁さんは「イブの翌朝はチェックアウト待ちの男性で行列ができた。翌年の予約を入れていくお客さんもいた」と懐かしむ。
クリスマスに臨む男性たちにとって「高級レストラン」と「ブランド品のプレゼント」の用意も必須だった。「チェックアウト後の部屋には高級ブランドの紙袋が残されていた。水色が一番多く、次にオレンジ色だった」と大森さん。ティファニーやエルメスなどの海外ブランド品が飛ぶように売れた。
バブル崩壊後はファミリー層や女性グループの利用が増えた。赤プリは老朽化から11年3月末で閉館し、特徴的な外観も取り壊されて姿を消した。跡地には16年にオフィスやショップなどの複合施設が開業。赤プリは「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」に生まれ変わり、施設の30~36階に入る。大森さんは現在、同ホテルの総支配人。今年のクリスマスは約9割の部屋が予約で埋まっているという。