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Jリーグならではの「優位性」とは…

FIFAコンサルタント 杉原海太

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ある競技がリーグやクラブ、球団、チームを商品として売れるものに組み立てていくとき、今や絶対に外せないのが国外のマーケットだろう。海外の市場でも売れる製品設計を目指すのは極めて今日的なテーマに思える。

グローバル化の先兵のように思われているサッカーにしても、たとえば、1993年にJリーグが発足した当時、ここまで国際化は進んでいなかった。Jリーグに限らず、世界中のリーグが93年当時はマーケットをもっぱら自国内に想定していたように思う。

サッカーは各国のFA(フットボールアソシエーション)、つまり協会系の力が強く、FA同士の戦いである代表戦やワールドカップ(W杯)の価値が一番高かった。それが欧州を先頭にクラブサッカーのビッグビジネス化が90年代後半から急速に進み、レアル・マドリードやFCバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッドなどが国際的なクラブになって、その主戦場である欧州チャンピオンズリーグ(CL)がとてつもない価値を持つようになった。

避けがたいグローバル化の影響

要約すれば、サッカーの世界は「代表」に「クラブ」が追いついて、世界の市場をめぐるせめぎ合いが、臨界点に近づきつつある状況になっている。

海外のマーケットをどれくらい意識するかは競技によって濃淡がある。取り巻く状況はそれぞれの競技によって異なるからだ。ただ、どんな競技もグローバル化の影響は避けがたく、サッカー界が直面しているような状況に早晩、ぶち当たる気はしている。それならば、海外マーケットもにらんで、あらゆるものを設計していった方がいいだろう。

野球界はサッカー界に比べて、国際サッカー連盟(FIFA)や日本サッカー協会(JFA)のような統括機関のリーダーシップが弱い。実質的に一番の力を持つのは米国の大リーグであり、日本のプロ野球はそこに選手を吸い取られる状況が固定化している。大きなマーケットが米国と日本にほぼ限られている中で、米国のスーパーパワーはさらに突出して大きい。そことどう向き合っていくかは半永久的な課題だろう。

バスケットボールは野球とサッカーの中間くらいという感じ。米国のプロバスケットボール(NBA)は強いけれど、国際的な統括機関である国際バスケットボール連盟(FIBA)も一定の影響力を持つ。

日本の男子プロバスケットボール(Bリーグ)に対して思うのは、サッカーのまねをそれほどする必要はないのでは、ということ。競技によって「アジア」の位置づけは違うし、1国1リーグの枠組みを見直してもいいのではないかと思う。他のリーグとの国境をまたぐような戦略(たとえば、東アジアリーグのようなもの)を組織してもいいのではないか。

国境をまたぐリーグはサッカーの場合は原則的に難しい。英国のプレミアリーグにイングランドではないウェールズのクラブが参加している例はあるものの、これは特殊なケースだろう。

東南アジアに「SUZUKI CUP」という大変人気のある代表チーム同士の戦いがある。東南アジアのナンバーワンを決める大会で、ある意味、W杯予選よりも盛り上がるくらいである。それで、このクラブ版をやろうという動きがあったが、実現に至っていない。

1国1協会1リーグというのはサッカー界が墨守する大原則だが、世界中のありとあらゆる競技団体がサッカーに倣う必要もないだろう。国際環境も地政学もそれぞれの競技で異なるのだから、自分たちの優位性を生かせる独自の仕組みをおのおのが考え出していけばいいと思うのである。

Bリーグの場合、中国や台湾などとリーグを編んでいくというのも一つの道ではないだろうか。

グローバル化の影響が端的に表れる例として、試合の視聴形態がある。今や日本にいながらにして、視聴料さえ払えば、世界中の主要なサッカーリーグの試合を見られる環境になっている。どんなサッカー好きでも1日24時間、サッカーの試合を見ているわけにはいかない。空いた時間に多くの選択肢の中から1つ、2つ選ぶことになる。その限られた時間を世界中のリーグが奪い合っているのだから、まさに大競争といえる。

Jリーグは数年前から東南アジアでの販路を広げようと積極的なプロモーションを展開しているが、たとえばマレーシアの人にすれば、英国のプレミアリーグも欧州CLも地元のリーグもJリーグも同じエンターテインメントとして、回転ずしの皿に乗って目の前を流れていくようなもの。そのとき、あえてJリーグの皿に手を伸ばさせるのは、よほどのことがない限り、難しい。

一つの戦略として、ヴィッセル神戸は元ドイツ代表のポドルスキーや元スペイン代表のイニエスタ、ビジャのような国際的なスター選手を獲得している。ビッグネームの獲得は今も昔も変わらぬ起爆剤の王道だ。

そこまで資金力のないクラブは、コンサドーレ札幌のようにタイ代表のスター、チャナティップを連れてきて、自分たちの存在をタイで浸透させている。イタリアのペルージャが中田英寿さんの成功で一気に日本で有名なクラブになったように、また「セリアA」というイタリアリーグの呼称が多くの日本人に浸透したように、同じことをそのままアジアとJリーグ、札幌の間で起こそうとしている。

それはそれで素晴らしいことだが、選手に依存するモデルはどうしても不安定で、それがメインになるとリスクも生じる。選手がそのリーグで活躍するかどうかは当たり外れがあり、プロモーションもそれ次第になりがちだ。中田英寿に続く「二匹目のどじょう」を狙ったセリアAのクラブが、ペルージャほどの成功を収められなかったように。

Jクラブの在り方がポイント

東南アジアでJリーグの存在感を高める上で、私が個人的に「これはセールスポイントになるのではないか」と思っているのが、実はJクラブの在り方そのものである。「地域に愛されるJクラブ」という設定が、これからプロリーグを立ち上げるとか、興隆させようとしている国々のリーグに大いなるヒントを与えられる気がするのだ。そういうコンセプトでサッカークラブを考えていること自体が、ビジネス真っ盛りの現在の環境にあっては逆に新鮮というか、強みになる気がするのだ。

ご存じのとおり、欧州のサッカークラブは100年以上の長い年月をかけて地域に根付いている。その分、彼らはそれが当たり前すぎて、その価値に対する自覚が相対的に薄い。一方、Jリーグは、地域とスポーツという別々に分かれて存在したものを、川淵三郎・初代チェアマンらが尽力し、ある意味、人工的につなげたものだ。

そこから時代は回り、今やスポーツに求めるものを広告の露出だけで十分だと考えるスポンサー企業はほとんどいない。そういう旧来のモデルにもまだまだメリットはあるが、それだけでは物足りないというスポンサー企業は確実に増えている。そんな企業が注視しているのは、地域コミュニティーを活性化させるツールとしてのクラブや球団であり、社会に貢献する連携プロジェクトをビジネス的な感覚を共有しながら、ともに動かしていけるスポーツの仲間である。

そういう意味で、ピッチ内の勝負では英国のプレミアリーグに太刀打ちできないけれど、歴史が浅い分だけ、社会連携に自覚的に取り組んできたJクラブにはユニークなノウハウが蓄積されているように思う。そういう地域コミュニティーをデザインするモデルをアジアに輸出することはできないだろうか。

川崎市とフロンターレが地域のコミュニティーで成し遂げたこと、松本山雅と松本の住民の一体感がどうやってつくり上げられたか。そういう感覚というか、ソフトパワーを輸出する。そこにJリーグのコアな価値があるような気がしているのだ。

ピッチの中で熱い戦いを披露することで、ピッチの外でコミュニティーをつくる力がスポーツにはあるが、Jリーグのユニークさは、そういう土壌がない地域に後からそれをつくっていったことにある。それは、似たような環境のアジアでユニークな訴求力を持つのではないだろうか。

「地域からの愛され方」を輸出

アジアのクラブに「地域からの愛され方」を輸出する。それもまたユニークなソーシャルビジネスになる気がしている。アジアでは新興の富裕層がオーナーになったサッカークラブが勃興しているが、そうした人たちはカネでチームを強くする欧州モデルを踏襲しがち(世界中が欧州モデルを目指しているのだが)。それとは違う価値があることをJクラブは提示していく。優位性を自覚し、意識的に使っていく。

経済成長に伴い、これからアジアにはいろいろな企業が勃興してくるだろう。自然にスポーツをバックアップする企業も出てくるに違いない。

そうなれば、地域とクラブと住民と企業が一体化して活性化する「川崎モデル」「札幌モデル」「松本モデル」のようなものに輸出する価値が出てくるのではないか。それは結果として川崎や札幌という街の宣伝にもなると思うのだ。

この25年間、真面目にやってきたこと(ホームタウン活動)を製品のコアにする。そして、アジアの企業には「なるほど、サッカークラブにはこういう使い方があるのだな」と知ってもらう。これは、クラブがある地域のクオリティー・オブ・ライフ(QOL=生活の質)を25年かけて向上させることに努めてきたJリーグにしか、できないことだろう。

 すぎはら・かいた 1996年東大院修了。コンサルティング会社を経て国際サッカー連盟(FIFA)運営の大学院を2005年に修了。06年からアジア・サッカー連盟(AFC)に勤めた後、14年から現職。FIFAの戦略立案に携わる。

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