実況アナが選んだ18年の中央競馬5大ニュース
2018年もきょうを含めて残すところあと10日。中央競馬の開催も残り3日です。ここで、独断と偏見による「私選・18年中央競馬5大ニュース」をお送りします。
桜花賞、オークス、秋華賞を制して「牝馬三冠」を達成したアーモンドアイのジャパンカップ制覇。2分20秒6のレコードタイムには、あぜんとした人も多いはずです。東京競馬場でのあの走りを素晴らしいと思う一方で、こんなにも速いタイムが出るレースに、今後も外国馬が参戦するのだろうかとも考えてしまいました。
アーモンドアイの次走は19年3月末のドバイ国際競走で、秋は凱旋門賞挑戦ということがいわれています。海外での活躍を期待しつつ、来年は有馬記念に出走してほしいとも思います。有馬記念はプロ野球のオールスターゲームと日本シリーズを足して2で割ったようなレースで、そこにその年、最も活躍した馬が出ないというのでは……。来年は世界を制し、そして日本のレースで走る姿を見せてほしいものです。
8月5日の朝、小倉駅(北九州市)からモノレールに乗ると、普段より若い女性が多く、「どこかで何かあるのか?」と思っていたら、その人たちは競馬場前駅で降りました。その日は人気俳優の竹内涼真さんのトークショーが競馬場で行われることになっていて、彼女らのお目当てはイケメン俳優だったのです。最終的に同日の小倉競馬場の入場者数は前年の倍を超える4万196人となり、21年ぶりに入場者レコードを更新。小倉競馬史上最大級の盛り上がりをみせました。
中央競馬の夏開催で登場するゲストはこれまで、お笑い芸人が多かったように思いますが、18年の夏は「イケメン」でした。6月17日の函館競馬場(北海道函館市)では、ドラマで大人気となった田中圭さんが来場して、昼休みでのトークショーでワーワー、キャーキャーという歓声が飛び交ったものでした。「函館にいる若い女性はみんな来たのでは?」と思ったほどで、イケメン俳優の集客力のすごさに驚きました。19年以降も日本中央競馬会(JRA)はイケメンを呼ぶと思いますね。
地方競馬のビッグイベントであるJBCの3競走が、11月4日に京都競馬場で行われました。創設18回目で初めてJRAの競馬場を舞台に行われた今回のJBCは、一定以上の成果があったと思います。
しかし、この日最も印象に残ったのは、レースではなく、戸崎圭太騎手(38)の表彰式でした。戸崎騎手はこの日の第3レースを勝ち、JRA年間100勝を達成しました。その表彰式に「祝・年間100勝」と書かれたプラカードを持って登場したのは、何と大井競馬のレジェンド・的場文男騎手(62)でした。戸崎騎手は元大井の騎手ですから、8月に地方競馬最多勝記録を更新する7152勝を挙げた大先輩を横にして「こんな光栄なことはありません」と恐縮していました。戸崎騎手に続いてマイクを向けられた的場騎手は、照れくさそうな顔をして後輩をたたえる言葉を口にしていました。その表情が実によかったですね。ファンにとってはうれしいサプライズだったと思います。これは戸崎騎手がこの日に偶然、達成したからですが、JBCがJRAの競馬場で開催されたからこそ実現したシーンともいえます。
福島競馬場は18年が開設100周年。夏の開催では様々なイベントも行われて大いに盛り上がりましたが、ボルテージが一番上がったのは、7月7日にオジュウチョウサンが先頭でゴールを駆け抜けた瞬間でした。
障害戦で無敵の強さを誇るオジュウチョウサンが有馬記念出走をめざし、7月7日に福島の開成山特別に武豊騎手(49)を乗せて出走しました。「障害界のスーパースター」の平地競走での走りを見ようと、多くのファンが押しかけ、入場人員は前年を4割近く上回り、オジュウチョウサンの関連グッズも飛ぶように売れました。コースを約1周半するレースでは、1周目のスタンド前をオジュウチョウサンが通過すると拍手と大歓声。期待に応えてオジュウチョウサンが勝つと、これまで福島競馬場では聞いたことがないような大歓声が湧きました。
レース後、オーナーは「有馬記念に出られたら、武豊騎手に乗ってもらいたい」と言っていましたが、その通りになりました。果たして、「二刀流」オジュウチョウサンはどんな走りを見せるのか楽しみです。
9月29日、武豊騎手が阪神競馬の第10レースを勝ち、JRA通算4000勝を達成しました。ここ数年、年間100勝する騎手は多くて4、5人ほどと思います。年間100勝は一握りのトップジョッキーだけが手の届くような大変な記録です。それを40年続けて、やっと「4000」になるわけで、とてつもない大記録です。
これまでにも数々の記録を打ち立ててきた武豊騎手ですが、新人最多勝記録は08年に三浦皇成騎手(29)によって破られました。今年は212勝の年間最多勝記録にクリストフ・ルメール騎手(39)が迫っていて、更新の可能性もあります。
しかし、記録面で武豊騎手を上回る騎手が現れても、武豊騎手以上に一般社会に名前が知られる騎手が今後出てくるでしょうか。もちろんそのようなスタージョッキーが出てきてほしいとは思いますが、どうでしょう。
武豊騎手は若いころから「競馬をもっと知ってほしい。もっと多くの人に競馬場に来てほしい」と思っていたと聞いたことがあります。重賞レースでなくても地方競馬のレースに騎乗し、様々なイベントやテレビなどのメディアに顔を出すことによって、競馬をアピールしてきた人でもあります。業界の第一人者としての自覚と、その行動こそが、数々の記録とともに武豊騎手のすごさだと思っています。
さぁ、もうすぐ有馬記念です。馬券を的中させて明るいクリスマスを迎えたいものです。ダメだったという人は中山競馬場のクリスマスイルミネーションで心をいやしてください。
(ラジオNIKKEIアナウンサー 小林雅巳)