健康寿命を伸ばせ 循環器病の対策基本法が成立
議員立法の「脳卒中・循環器病対策基本法」が2018年12月10日の衆院本会議において、全会一致で可決、成立した。同法では、脳卒中や心筋梗塞などの循環器病の予防推進と、迅速かつ適切な治療体制の整備を進めることで、国民の健康寿命の延伸と医療・介護費の軽減を目指す。
法案の正式名称は「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法案」。心臓病と脳卒中は、日本人の死因としてはがんに次ぐ上位を占め、介護を必要とする患者が増加する主要な原因にもなっている。こうした現状を踏まえ、同法の基本理念として、生活習慣の改善などにより循環器病の予防を推進するとともに、循環器病患者に対して迅速な搬送と適切な治療を行える医療体制を、地域によらず整備することを求める。
国は基本理念にのっとり、循環器病対策推進基本計画を策定し、対策の効果への評価を踏まえて少なくとも6年ごとに計画の見直しを検討する。また、医療保険者に対しては、政府や自治体が行う循環器病予防の普及啓発などの施策に対する協力を求める。
法制化への動きは、09年に脳卒中関連の14団体が「脳卒中対策基本法」を提唱したことに端を発する。立法化に向けた署名運動などが展開され、11年4月に18万人分の署名が国会に提出されたことを受け、同年6月に議員立法として発議されたが、審議がなされないまま11月に衆院が解散されたことで廃案となっていた。
法制化が進まなかった理由の1つが、一部の議員からの「病気ごとに個別法を作ったらきりがない」との批判だ。そこで、脳卒中だけでなく心臓病など循環器病関連の患者会や学術団体が集まり、「脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会」を発足。原因や予防策に共通点の多い脳卒中と循環器病を包括的に扱う基本法の法制化へと舵(かじ)を切った。16年5月には国会議員に要望書を提出。超党派の議員による再発議への動きが進み、18年の第臨時国会最終日に成立に至った。
同法の成立に向けて日本脳卒中協会などで長年取り組みを続けてきた山口武典氏(日本脳卒中協会常務理事)は、日経メディカルの取材に対し「脳卒中などの予防や発症時の対応について広く国民に知られるようになるとともに、救急搬送時の対応、リハビリテーションのシステムにも大きな変化が訪れるだろう。寝たきりの患者の減少、すなわち健康寿命の延伸や医療費の削減が期待される。同時に、全国レベルでの症例登録が進み、膨大なデータの蓄積が可能になる」とコメントした。
(日経メディカル 安藤亮)
[日経メディカル Online 2018年12月14日掲載]