元徴用工、日韓すれ違い露呈 文大統領「判決を尊重」
日韓議連議員団と会談
【ソウル=恩地洋介】韓国を訪れている日韓議員連盟会長の額賀福志郎元財務相ら超党派の議員団が14日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領や韓国側の議員団と会談した。日本側は日本企業への賠償命令が相次ぐ元徴用工訴訟に関し、日韓請求権協定に基づく適切な対応を要請した。韓国側は司法判断を尊重する立場や対応策には時間がかかるとの見通しを表明。双方の溝が露呈した。
日韓議連メンバーと文氏は韓国大統領府で約40分会談。額賀氏や韓国側によると、額賀氏は「1965年の請求権協定に基づき適切な措置をとってほしい」と要請した。文氏は「日本と同様に三権分立は確固で、政府は判決を尊重せざるを得ない」と回答。関係省庁と専門家を中心に「十分な時間をかけて解決策を模索する」とも語った。
韓国側によると、文氏は韓国政府が11月末に一方的な解散を表明した元従軍慰安婦支援の財団についても説明。「長いこと活動が停止しており、運営・維持費だけが支出されてきたため財団を解散した」と述べ、日本側が拠出し宙に浮いている10億円の扱いを協議したいと主張した。
日韓の議員団はソウル市内で議員連盟の合同総会を開き、元徴用工訴訟を巡り「日本側は韓国政府が国際法にのっとり適切な対応をとるよう要請」と明記した共同声明を採択した。しかし日本側は安倍晋三首相が恒例の祝辞を見送る一方、韓日議連の姜昌一(カン・チャンイル)会長は日本の行政と立法府も韓国司法の判断を尊重するよう求めるなど、すれ違いが否めなかった。
開会式には文氏から元徴用工問題への対応を委ねられている李洛淵(イ・ナギョン)首相も出席した。退席時に旧知である自民党の竹下亘前総務会長に歩み寄り「対応策には少し時間がかかります」とささやく場面があった。韓国政府は当初、年内の対応発表をめざしていたが、来年にずれ込むとの見方が出ている。