年俸・人間関係…FA選手 決断の決め手は様々
今年のストーブリーグは大物選手の移籍のニュースが次々に飛び込んできた。激しい争奪戦が繰り広げられ、羨ましいというほかない大型契約も結ばれた。野球選手はいつダメになるか分からない商売だ。稼げるうちに少しでも多く稼いでおきたい。とはいっても、カネがすべてというわけでもない。
■選手ならやっぱり気になる他球団の評価
選手は自分を最も高く評価してくれるチームでプレーしたいと思っている。実際に移籍するかどうかはともかく、色々な球団が自分をどうみているのかは気になるところだ。僕は中日時代の2001年にフリーエージェント(FA)権を行使した。横浜(現DeNA)から声がかかり、かなりの好条件を出してくれた。それでも結局、移籍しなかった。
理由のひとつはフロントと現場の温度差だ。フロントは熱心に誘ってくれたが、現場の監督からは「どうしてもうちに」という気持ちが伝わってこなかった。一方、中日は星野仙一さんから山田久志さんに監督が代わり、熱心に引き留めてくれた。その期待に応えたかった。実際は、その山田監督とソリが合わず、1年でオリックスに飛び出してしまうのだが……。
丸佳浩が広島から巨人に移ったのは理解できる。今季の2倍を優に超える年俸をもらっての5年契約。広島、ロッテも頑張ったが、自分という商品を最も高く評価してくれるチームが巨人だったということだろう。広島ファンは残念だろうが、自然な結論だ。
しかし、今オフの巨人の補強策には賛同できない。チームの中心を期待できる丸の獲得はうなずけるが、全盛期からはほど遠く、オリックスを自由契約になった中島宏之を1億5000万円も出して取るのはどうなのか。西武からFA宣言した炭谷銀仁朗を獲得したのも理解に苦しむ。小林誠司ら生え抜きの捕手とそれほど違うのだろうか。いくら選手を集めてもポジションは9つしかない。選手を持て余すような補強は考え物だ。
僕の古巣の楽天も石井一久ゼネラルマネジャーの下、積極的に動いた。最大の収穫は西武から引き抜いた浅村栄斗だ。破格のオファーをしていたソフトバンクとの争奪戦を制したのは気持ちいい。相当な金額を積んだようだが、サッカーのアンドレス・イニエスタさんには30億円以上といわれる年俸を払っている会社である。その気になれば出せるのだ。岩隈久志も復帰するのかと思っていたが、こちらは巨人に行ってしまった。
浅村に関しては、金額よりも人のつながりが大きかったのだろう。石井GMのほか、渡辺直人、岸孝之ら西武時代のチームメートがそろっていて溶け込みやすい。ソフトバンクのような強いチームでプレーするのもいいが、今季最下位の楽天の一員として強いチームを倒すのも面白い。そんなチャレンジ精神もあったかもしれない。
■菊池も抜け、西武には厳しいオフ
かたや、今季のパ・リーグを制した西武には厳しいオフとなった。主将の浅村、炭谷がFAで去り、エースの菊池雄星もポスティングでの米大リーグ移籍が見込まれる。主力選手の流出はもはや風物詩。チームが弱くて優勝できなかったり、年俸が抑えられがちだったりするわけでもないのに、どうしてこれほど流出するのだろう。
チーム内の人間関係や細かいことは分からないが、本拠地球場の立地や設備がハンディになっているのは確かだろう。壁面がないドーム球場は日が当たらず、風通しが悪い。春先や秋は冷え、夏にはサウナのように蒸す。空調の利いたドーム球場と比べれば、消耗度には雲泥の差がある。都心から遠い立地もマイナスだ。メットライフドームに限らず、パ・リーグの本拠地は主要駅や空港から離れているところが多く、通勤や遠征の負担はセ・リーグより確実に大きくなる。
実体験を踏まえ、改めて12球団で本拠地にしたい球場を考えてみると、総じてパのチームは後になってしまう。ではぜひとも本拠地にしたいのはどこか? これは迷わず東京ドームだ。空調は利いているし、アクセスもいい。ホームランも出やすい。あ、僕も巨人を選んでしまった。(金額は推定)
(野球評論家)