英、EU離脱案採決を延期 3つのポイント
メイ英首相は10日、英国と欧州連合(EU)で合意した離脱案をめぐり、11日に議会下院で予定していた採決を見送りました。来年3月末に離脱が迫るなか、経済を混乱させかねない「合意なし離脱」を回避できるかどうかという正念場での一時撤退に、経済界からも懸念や不安の声が広がっています。
(1)なぜ採決を延期したのか?
メイ首相は10日の議会の演説で「英・EUの離脱案に深い懸念が広がり、(このまま採決しても)大差で否決される」と延期の理由を説明しました。複数の英メディアによれば議会下院の実質過半数である320票に対し、採決直前には200票台前半しかとれないという観測も出ていました。▼EU離脱案 造反相次ぐ 英与党、審議でメイ政権追及 市場は「合意なし」警戒
(2)なぜここまで反対論が広がったのか?
最大の原因は離脱後に、陸続きの英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドで厳しい国境管理を避ける解決策が見いだせていない点です。英・EUの合意では解決策が見つかるまでは「英国全土をEUとの関税同盟に残す」などといった暫定策をまとめましたが、こうした案が様々な勢力からの批判を受けました。
▼英議会承認メド立たず EU離脱案、40~70票不足 メイ政権、切り崩し懸命
(3)メイ首相の次の一手は?
現段階でははっきりしません。メイ首相は10日の議会で、離脱案の見直しのためにEUと再協議する意向は示しましたが、採決をいつまで延期するかは明言しませんでした。反対派は様々な意見を持っていて合意形成は容易ではありません。来年3月末の離脱時期を先延ばしして、EUと協議する時間を稼ぐこともあり得そうです。