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インド中銀、パテル総裁が辞任

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【ニューデリー=早川麗】インド準備銀行(中央銀行)のウルジット・パテル総裁(55)が10日、辞任を表明した。任期は2019年9月までだった。中銀は金融政策や信用危機が懸念されるノンバンクへの対応を巡りモディ政権との意見の相違が目立ち、互いに公の場で非難するなど対立が激化していた。両者の対立が辞任の背景にあるとみられる。突然の辞任は多方面に混乱を招きそうだ。

中銀は10日、パテル氏の名前で声明を発表した。同氏は「個人的な事情により辞任を決めた」と述べたほかは中銀の職員らへの謝辞を書いた短い内容で、辞任の詳細な理由は明らかになっていない。後任は10日時点で未定。

インドでは18年2月に国営銀行2位のパンジャブ・ナショナル銀行(PNB)で巨額の不正取引が発覚した。政府が規制当局である中銀を批判する一方、中銀は国営銀行に対しては十分な監督権限が与えられていないと反論。金融政策では中銀が6月と8月に2会合続けて利上げをし、10月に政策姿勢を「中立」から「引き締め」に変更した。一連の動きに対し、金融緩和を求めるモディ政権側が批判した。

最近では信用危機が懸念されるノンバンクを巡り政府が中銀に異例の指示を出し、中銀は独立性が損なわれると反発した。政府はノンバンクの貸し渋りで不動産などの資金繰りに影響が出ていると指摘し、中銀に対応を求めた。しかし、中銀はノンバンク業界全体では流動性には問題はないとの姿勢で、政府と温度差があった。

中銀は独立性を認められた組織だが、インド準備銀行法には公共の利益が損なわれる場合には政府の介入を認める「準備銀法第7条」がある。政府がかつて行使したことのない第7条の行使に言及したことも大きな反発を招いた。

パテル氏は政府との対立を背景に11月には辞任観測が浮上し、体調を崩したとの報道もあった。ただ5日に開いた政策決定会合後の記者会見に現れたパテル氏は体調が悪いようには見えず、政府との対立に関する質問には答えなかった。19年9月の任期満了まで10カ月近くを残す中での即日の辞任は政府への抗議の意味もありそうだ。

インドではパテル氏の前任で、金融危機を予言したことでも注目を集めたラグラム・ラジャン氏が、続投意欲があったにもかかわらず1期3年の任期満了をもって退任した過去がある。ラジャン総裁時代も金融政策を巡り政府の介入があったほか、ラジャン氏自身がモディ政権の製造業振興策などを批判した。モディ政権下では中銀総裁が2代続けて政権との関係がこじれ、退任・辞任に至ることとなった。

経済政策の一翼を担う中銀総裁の突然の辞任は経済重視のモディ政権にとって、来春の総選挙を控え打撃となりそうだ。

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