日欧EPA、国会承認 2月1日にも発効
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が8日未明の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、承認された。EUも12月中に議会や加盟国の閣僚理事会でそれぞれ採決する予定で、2019年2月1日に発効する公算が大きくなった。世界で最大級の自由貿易圏が誕生する。
日欧EPAは日欧が国内手続きを終えた翌々月の1日に発効する規定がある。EU側の手続きを待つだけになった。日欧EPAは関税分野で農林水産品と鉱工業品を合わせ日本側が約94%、EU側が約99%撤廃。17年の世界の国内総生産(GDP)の27.8%、世界貿易の36.9%を占める。
EUが日本の乗用車にかけている10%の関税は8年目にゼロになる。自動車部品も9割以上の関税が即時に撤廃になる。農林水産品のほとんどのEU側の関税も即時撤廃だ。関税がなくなれば、日本企業や農家が輸出する車や農産品の販売価格が下がり、現地でのシェア拡大も期待できる。
日本側は欧州産のワインにかける関税をゼロにする。日本で人気のあるフランス産ワインなどがより手ごろな価格で手に入るようになりそうだ。欧州産のソフトチーズは低関税の輸入枠を作り、16年目に関税をゼロにする。
農林水産分野は全体で約8割の品目の輸入関税を撤廃する。欧州産の輸入拡大で国内農家には市場を奪われるとの懸念もある。政府は18年度第2次補正予算案に農家の支援策を盛り込む。
日欧はインターネット通販などの電子商取引でもルールをつくる。電子署名や電子的な手段を使った契約で、法的な効力を認めるようにしたり、日欧間の企業などがデータを送り合う際に関税をかけることを禁じたりし、電子商取引の安全性や信頼性を確保する。
米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」は12月30日に発効する。日本を除く10カ国は19年1月1日から発効2年目に入る。日本産品への関税を下げるペースは速まる。政府はTPP11と日欧EPAの発効によって、実質GDPを約13兆円、雇用を約75万人押し上げると試算する。
日本は年明けに米国との物品貿易協定(TAG)交渉が始まる。一連の自由貿易圏の拡大が自国優先の通商政策をとるトランプ米政権との交渉材料になると期待する。
TPP11や日欧EPAに参加していない米国の農家や輸出企業は日本市場で競争力が低下する。米国がTAGの早期妥結を求めてくれば「農業関税の引き下げ幅はTPPや日欧EPAが限度」という日本の主張も受け入れられやすくなる、という見立てだ。
日中韓やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国による広域の自由貿易圏である東アジア地域包括的経済連携(RCEP)についても、19年の妥結を目指して調整を進める。