パイオニア上場廃止へ ファンド傘下で再建
経営再建中のパイオニアは7日、アジア企業に投資するアジア系投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアの傘下に入ると発表した。ベアリングが総額で1020億円を投じて買収する。パイオニアはベアリングの完全子会社となり、上場を廃止する。3000人規模の人員削減に踏み切るほか地図とデータを組み合わせた新ビジネスで再建を図る。
「早期に色々な改革をするには非上場となるのが必然だった」。同日、都内で記者会見したパイオニアの森谷浩一社長は、ベアリング傘下で株式を非公開化する理由についてこう述べた。
18年3月末時点で連結で約2万人いる従業員(非正規を含む)のうち約15%、3000人程度を削減する。生産や販売体制の見直しや本社機能の縮小に加え、経営陣も刷新する。森谷社長と社外取締役2人を除く現在の取締役は辞任し、ベアリングから取締役を招く。
今後はリストラを通じてカーエレクトロニクス事業の収益性を改善する一方、「地図やデータの組み合わせによるソリューションビジネスでの成長を目指す」(森谷社長)としている。
パイオニアは子会社に高精度なデジタル地図向けのデータベースを持つインクリメント・ピーを抱えている。自動運転に高精度な地図データは欠かせない。地図と人工知能(AI)を組み合わせ、走行中の車に様々な情報を提供するソリューションサービスの拡大も視野に入れる。
9月時点の基本合意では、正式契約時にベアリングが500億~600億円の増資を引き受ける予定だった。だがベアリングは出資交渉を進める過程で金額を増やせば「改革にかける時間に余裕ができる」(ベアリングのジォーン・エリック・サラタ最高経営責任者)と判断。非公開化したうえで再建を目指す方向にかじを切った。
ベアリングは19年3~6月に第三者割当増資と債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ、DES)で770億円を出資。その後、同5月以降に既存株主からも約250億円で株式を買い取り、完全子会社化する。買い取り額は1株あたり66.1円と7日終値(88円)よりも25%安い。パイオニアが2019年1月25日に開く臨時株主総会で正式に決める。
パイオニアの既存株主にとっては、増資に伴う大幅な企業価値の希薄化と、現在の市場価格よりも安い価格での買い取りという厳しい再生スキームになる。再生には臨時総会での承認が条件となるだけに、株主への丁寧な説明が必要になりそうだ。
自動車・部品各社は「CASE(つながる、自動運転、シェアリング、電動化)」と呼ばれる次世代技術への対応を迫られ、競争を生き抜くための再編が相次ぐ。アルパインは親会社のアルプス電気と経営統合し、クラリオンは日立製作所グループを離れて仏自動車部品大手のフォルシアの傘下に入ることが決まっている。