米SEC、四半期開示義務巡り意見聴取へ 19年方針
【ニューヨーク=宮本岳則】米証券取引委員会(SEC)のジェイ・クレイトン委員長は6日、2019年の活動計画を説明し、企業業績の四半期開示義務を巡って、市場参加者から幅広く意見を募ると表明した。株主総会の議案賛否を左右する議決権行使助言会社についても、監督のあり方を議論する方針を示した。日本でも問題点が指摘されてきたテーマだけに、SECの動向は注目を集めそうだ。
クレイトン氏はニューヨーク市内で講演し、SECの重点活動分野として5つのテーマを挙げた。長期投資を促す重要性を強調するなかで、四半期決算や業績予想開示のあり方に言及した。現在の仕組みが短期主義を招いているか否かについて、議論が続いていると指摘した上で「すべての市場参加者に意見を求めたい」と述べた。SECは近く委員会を開き、正式に意見公募の開始を決める見通しだ。
今回の方針はトランプ米大統領の意向に沿ったものだ。8月にSECに対し四半期から半期に変更した場合の影響を調査するよう求めていた。米企業幹部から負担軽減策の一つとして提案を受けたという。SECが意見公募後に規制改正に動くかどうかは不透明だが、議論は活発になりそうだ。すでに公的年金などが加盟する米機関投資家協会は四半期開示廃止に反対を表明した。
クレイトン氏が時間をかけて説明したのは、株主総会の議決権行使プロセスの改善だ。特に機関投資家に議案賛否をアドバイスする議決権行使助言会社については、改善が必要との意見が大勢だとして、監督強化に意欲を見せた。
米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)や米グラスルイスなど大手助言会社の影響力が強まっている。アクティビスト(物言う株主)の株主提案など賛否が分かれる議案では、助言会社の推奨で結果が大きく左右される。企業側からは「助言会社が議案内容や会社の事情をよく理解していない」といった不満の声が上がる。
投資家からも懸念の声は出ていた。ISSは投資家側に議決権行使を助言する傍ら、事業会社向けにコンサルティングサービスを手がけている。これが利益相反となって、投資家向けの助言内容が「企業寄りになる」との疑念を生んでいた。SECは今後、助言会社向けの新たな情報開示ルールを検討するとみられる。クレイトン氏は「議案の分析方法や推奨内容の決定過程の透明化が必要」と述べた。
SECの動向は日本での議論にも影響を及ぼしそうだ。四半期開示は米国発祥ともいわれ、日本は米国の制度を参考にして導入した。日本企業の一部からも負担軽減を求める声があり、金融庁の審議会でも議論になった。議決権行使を巡っても同様だ。日本の機関投資家が積極的に議案への賛否を表明するようになり、会社議案への反対比率が増加。助言会社の影響力を企業側が無視できなくなっている。
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