米、ウクライナで臨時偵察飛行 ロシアをけん制
【ワシントン=中村亮】米国防総省は6日、同国の偵察機がウクライナ上空で臨時の監視飛行を実施したと発表した。声明で「このタイミングでの飛行はウクライナや同盟国(の防衛)に対する米国の取り組みを再確認するためだ」と説明した。11月下旬にウクライナ艦船を拿捕(だほ)したロシアをけん制した。
米CNNテレビによると、臨時の偵察飛行はロシアによるウクライナ領クリミア半島の侵攻を受けて実施した2014年以来となる。ウクライナ軍の要請を受けて実施したもので、ドイツやフランス、英国、カナダなどの軍関係者も偵察機に同乗した。
国防総省はロシアのウクライナ艦船の拿捕事件を「合理性のない攻撃だ」と非難し「ロシアの挑発的かつ脅迫的な行動がさらに危険な方向に加速している」と懸念を示した。「米国はロシアとの良好な関係を望むがウクライナやその他の国・地域での非合法で安定を損なう行動をやめない限り、良好な関係は実現しない」と強調した。
米国は安全保障面でロシアに圧力を強めている。5日には米太平洋艦隊が、ロシア極東のウラジオストク沖のピョートル大帝湾付近でミサイル駆逐艦による「航行の自由作戦」を実施したと発表したばかりだ。一方、ロシア国防省は「米艦はロシア領海に近づかずロシア艦の監視下で100キロメートル以上離れた場所を航行しただけだ」と指摘していた。
トランプ米大統領は1日にブエノスアイレスで予定していたプーチン大統領との会談をウクライナ情勢の緊迫を理由に中止した。米政権内には航行の自由を脅かすロシアの行動を認めるわけにはいかないとの意見が目立つ。
ただトランプ氏はロシアによるクリミア併合を「オバマ前政権で起きたことだ」などと黙認するととられかねない発言も繰り返している。トランプ氏が対ロ強硬に方針転換するかは現時点で判然としない。