道後に新たな魅力 足湯やアニメ、本館修理も「披露」
道後温泉本館(松山市)の2019年1月からの保存修理工事を前に、観光への影響を和らげようとする松山市の対策が具体化してきた。手塚治虫さんの漫画「火の鳥」とのコラボや、近隣高台の足湯新設を通じた「見せる工事」としての観光資源化などだ。受け皿となる「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」の充実にも取り組み、約7年の「再生期間」を乗り越える。
「足湯でくつろぎながら道後本館の全景を眺めてほしい」。松山市の野志克仁市長は11月下旬、道後温泉本館南側に位置する冠山「空の散歩道」のリニューアル詳細を明らかにした。
本館を見下ろせる位置に、6人程度が同時に利用できる横幅6メートルの足湯を設置する。本館と同じアルカリ性単純泉の源泉を使用し、加温加水しない掛け流しが楽しめる。
春はサクラ、夏はアジサイ、秋はモミジ、冬はカンツバキといった四季折々の草花が彩る植栽帯も設ける。整備費用は約4800万円。12月26日から一部公開し、19年1月7日には全面オープンする。
保存修理工事のシンボルには手塚治虫さんのキャラクター「火の鳥」の起用を決定した。一部営業を続けながら実施する本館工事を「道後温泉の再生」ととらえ、キャッチコピーを「道後REBORN(再生)」とした。
火の鳥活用の詳細は未定だが、夜間に本館建物に映像を投映するプロジェクションマッピングの演出や、アニメの製作、工事中の限定グッズへのロゴマーク使用などを検討する。ポニーキャニオンを事業者に選定し、20年度までの事業費は約1億7000万円。
道後温泉本館は古い部分は1894年の完成で、老朽化が進む。19年1月15日から始まる工事では耐震補強などを施す。工期は約7年を見込み、工事区域を分けながら部分営業を続けるが、地元経済への影響が懸念される。
いよぎん地域経済研究センター(松山市)は部分営業しながら改修した場合(工期8年で試算)の経済損失を約348億円と試算。市や地元関係者らは17年秋に新しい外湯「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」を開業させるなどテコ入れを進める。マイナスの影響を約190億円まで縮小させる狙いだ。
松山市によると、同館の10月末までの入浴客数は約22万人。一定の効果が見られるが、さらなる定着を目指し、グランドオープン1周年を記念するイベントを12月、相次ぎ開催する。
15、16日には「帰ってきた道後動物園」として、中庭でポニーやウサギなどに触れ合える移動動物園を企画。1988年まで道後公園内にあった動物園の写真や動画を展示する。
22~25日には館内に展示されている伝統工芸の砥部焼や大洲和紙などの体験会や販売会を開催。26日には記念セレモニーや餅まきを行うほか、19年2月末までの冬季期間中には中庭のライトアップも行う。
野志市長は「これからも入浴客の満足度を高め、100年先まで輝き続ける道後の宝に育てていきたい」と話す。苦境を好機とし、より強い観光地として生まれ変わるための、松山市の取り組みが求められる。
(松山支局 棗田将吾)