水道事業の民間委託を推進 改正法が成立
自治体の水道事業の広域化や民間参入を促す改正水道法が6日の衆院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。自治体が水道事業の運営を民間企業に委託する「コンセッション」を導入しやすくするのが柱だ。水道は老朽化が進んでおり、設備の更新が急務だ。水道の値上げを抑えながら、どうサービスを維持していくかが課題になる。
「広域連携や官民連携などによって水道の基盤強化を図る」。改正法の成立を受け、菅義偉官房長官は同日の記者会見でこう語った。
厚生労働省によると、全国の自治体が2015年度時点で手掛ける上水道事業は約1300。このうち、給水人口5万人未満が900に上る。人口減で利用が減り、3割が赤字だ。
水道設備は高度成長期に整備されたものが多く、老朽化も進んでいる。総務省によると、法定耐用年数を超えた水道管延長の割合は全国で15%にのぼる。利用減少と設備更新費用の増加で、多くの自治体が料金を上げざるを得ない状況にある。
一部の自治体はコンセッションの導入に動く。宮城県は21年度、県が水道事業者の認可を受けたままで運営権を民間事業者に委ねる予定だ。民間ノウハウの活用で設備の運転や維持管理、設備更新に要する費用を20年間で最大546億円削減できると試算する。
削減分は水道料金の引き上げを抑える原資にする。民営化で非常時の対応が手薄になることを懸念する声もあるが、村井嘉浩知事は「施設は県が所有し、災害時も県が責任を持って復旧する」と理解を求める。
民営化後に水道料金が上がることへの懸念も根強くある。例に挙げられるのがフランスだ。民営化が定着している一方、水道料金の値上がりに不満を持つ市民が少なくない。パリ市は水道料金の決め方が不透明などの理由で、再公営化した。
こうした状況を踏まえ、改正法では水道料金を条例で定めた範囲内でしか設定できないようにする。国は水道料を含めた事業計画を審査し、不当に高い料金設定をしていないか目配りする。
改正法では広域連携を促す仕組みも取り入れる。都道府県が市町村などと水道事業の広域化に向けた協議会を設置できるようになる。ほぼすべての道府県が広域化の是非を検討している。
水道事業に詳しい日本政策投資銀行地域企画部の足立慎一郎担当部長は「人口減少が進む中、水道事業者が単独で事業を続けるには限界がある」と指摘する。その上で、効率運営などの民の強みと、災害対応などに責任を持つ自治体のバックアップを組み合わせるなど「官と民が互いの強みを持ち寄って運営すべきだ」と提案している。