仮想通貨「疑わしい取引」5944件 1~10月
仮想通貨交換業者がマネーロンダリング(資金洗浄)などの疑いがあるとして届け出た取引が、2018年1~10月に計5944件あったことが6日、警察庁のまとめで分かった。17年は届け出が義務づけられた4月から12月にかけては669件だった。同庁は大幅に増加した背景として交換業者の間で届け出制度が定着してきたことがあるとみている。
警察庁は同日、資金洗浄などの状況をまとめた「犯罪収益移転危険度調査書」を公表。この中で仮想通貨について、匿名性が高いことや取引の追跡が困難なことを挙げ、「マネーロンダリングなどに悪用される危険度は他業態よりも相対的に高い」と指摘した。
届け出の内容としては、偽名とみられる名前で複数の口座を開設するようなケースがあった。
調査書は、実際に資金洗浄や犯罪に悪用された事例として、不正に取得した他人名義のアカウントで仮想通貨を購入したうえで海外サイトで日本円に換金し、他人名義の口座に振り込むようなケースを挙げた。違法薬物や児童ポルノの取引に使われた事例もあった。
犯罪収益移転防止法は、資金洗浄などの疑いがある取引を国などに届け出るよう金融機関やクレジットカード会社などに義務付けている。17年4月の同法改正で仮想通貨交換業者も対象となった。
仮想通貨交換業者は16社ある。資金洗浄などへの対策として、金融庁は取引時の本人確認や取引記録の保存を徹底するよう求めている。チェック体制が不十分などとして業務停止や業務改善命令などの行政処分を10月までに28件行った。