年末エコノミスト懇親会 首相「増税対応で財政政策」
日本経済新聞社、日本経済研究センター、テレビ東京が主催する「年末エコノミスト懇親会」が5日夜、都内のホテルで開かれた。安倍晋三首相や日銀の黒田東彦総裁ら約330人が参加した。
安倍首相はあいさつで米中の貿易摩擦に触れて「国際経済の状況に左右されない強い経済をつくっていきたい」と述べた。また2019年10月に予定される消費税率引き上げについては「(増税の)衝撃をしっかりと跳ね返す財政政策をつくる」と語った。
黒田総裁は「来年はイノシシの年で猪突(ちょとつ)猛進というが、内外のリスクを見ながらしっかり政策運営をしていきたい」と話した。
一方、出席者からも消費増税などを巡り、政策への注文が相次いだ。キリンホールディングスの磯崎功典社長は「社会保障費の負担増など、若者の将来不安は根強い。個人消費の拡大には財政健全化が喫緊の課題だ」と述べた。
JR九州の唐池恒二会長は「大国間の摩擦や最近の株価の動きなど、先行きの不透明感が増している。これらの動向を注視しつつ、消費増税への対策には万全を期す必要がある」と話した。
19年の世界経済の見通しについては、米中の貿易摩擦などを念頭に不安の声が目立った。日本郵政の長門正貢社長は「戦後の国際協調を否定する動きは、短期的な市場の混乱だけでなく長期的には世界的なインフレにもつながる」と指摘した。
立命館アジア太平洋大学の出口治明学長は「世界の課題は19年もトランプ米大統領の振る舞いだ。米中の手打ちがどこかの時点で行われるのか、また米民主党の次期大統領候補が誰になるかも注目点だ」と話した。
アジア開発銀行研究所の根本直子エコノミストは「世界経済は減速が見込まれる。貿易戦争を巡る不確実性のほか、新興国からの資金流出や英国の欧州連合(EU)離脱も景気の下振れ要因となり得る」と述べた。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「物価は原油安などを受けて低下が見込まれる。日銀は2%の物価安定目標の位置づけを見直し、機動的な政策運営が求められる」と金融政策に注文をつけた。