ついに長短金利逆転
3日の米国債券市場で、米3年債利回りが2.838%、5年債が2.834%と一時的ながら僅差で逆転する局面が生じた。
長短金利差を映す代表的な指標とされる10年債と2年債の利回り格差は、依然として順ザヤだが、10年債で2.966%、2年債が2.821%とその差が0.14%程度まで縮小している。これは2007年以来の利回り格差縮小だ。
イールドカーブ(利回り曲線)平たん化の「異変」は、米中会談直後に生じたことが示唆的だ。
基本的に、短期金利は米連邦準備理事会(FRB)が決めるが、長期金利は市場が決める。
暫時の休戦に突入して、とりあえず追加関税は90日間の棚上げとなり、12月の米利上げは予定通り実行されそうだ。それゆえ、FRBの政策金利と相関が強い2年債利回りは前日比でほぼ変わらず。一方で、米中貿易摩擦の長期化を懸念して、将来のインフレ期待を映す10年債利回りは0.04%ほど下落した。
その結果、イールドカーブのフラット化(金利差縮小)が進行したのだ。
長期と短期の金利水準が逆転する「逆イールド」が起きると、過去の事例では、タイムラグを経て景気後退入りしている。
ウォール街のつわものでも気味悪がる現象だ。
近づく12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが予定通り決定されれば、その時点で、10年債と2年債の利回り逆転が生じる可能性がある。市場には切迫感が強まっている。
3日は、90日間の猶予となり、安堵の相場となったが、マーケットの眼は債券市場に向いている。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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