山形県、「雪条例」制定へ 除雪対策・雪利活用
山形県は雪に関する条例を制定する。12月議会に「いきいき雪国やまがた基本条例」(仮称)を提案し、除雪対策や雪の利活用による地域活性化につなげる。高齢化・人口減で自宅の雪かきが困難になる人が増え、豪雪地帯は人口流出がより深刻。条例で新しい除排雪の仕組みづくりを目指すが、理念条例では済まされない現実もある。
「雪対策の発祥の地として、新たな除排雪の仕組みや技術革新の予算を新年度で検討する」。吉村美栄子知事は27日の記者会見でこう表明した。山形県は昭和初期に地元選出の代議士が雪害対策に取り組んだことなどから雪対策先進地を自負しており、県単位では珍しい条例制定で変化に対応する狙いだ。
背景にあるのはゲリラ豪雪のような自然環境と高齢化など社会情勢の変化だ。特に高齢化・人口減の影響は深刻。道路の雪は除雪車が取り除いても、玄関から道路までの除雪や雪下ろしは高齢者には負担が重い。地域が担った除排雪を行政が代替するよう求める声は強まる一方だ。
条例案では「自助、共助、公助による総合的な除排雪の推進」を定め、「ボランティアの受け入れなど新たな仕組みを作る」(吉村知事)考え。県はすでに「やまがた除雪志隊(したい)」を毎年募集し、これまでに850人が登録している。
今後は、広い住宅では1回10万円かかることもある除排雪を安価に請け負う有償ボランティアを市町村と本格的に取り入れていく。人手不足も深刻なだけに「アンケートで県民の6割は手伝ってもよいと回答した共助の仕組みを作りたい」(県企画振興部)という。
条例のもう一つの狙いが雪の利活用だ。吉村知事は「海外からも誘客を見込める観光資源になり、雪のプラス面を経済にいかしたい」と説明。県内でも特に雪が多い尾花沢市の菅根光雄市長は「雪をいかしたイベントの集客力を、条例による県の支援で高めることができればありがたい」と期待する。
ただ現実は厳しい。市内で2メートル以上積もることもある尾花沢市の人口は10年間で2割減り1万6000人に。この1年間で100人以上が隣接する雪の少ない東根市に転出した。県内では最上地域以外の豪雪地帯も人口減少が著しく、「家を守る意識も薄れ、今後も雪の少ない都市へ流出が進む」(県内不動産会社)とみられている。
山形大学東北創生研究所の村松真准教授は「豪雪地帯は転居できない高齢者が取り残された孤立社会になっている」と分析。ボランティアによる除排雪も本格的にやろうとすると「素人には危険極まりない作業」と警鐘を鳴らす。
17年度は雪下ろし中の転落など雪害事故で16人が死亡、153人が重軽傷を負った。豪雪地帯の金山町で育った村松准教授は「雪の活用は以前から提唱されながら進まない。明るい話でごまかすのではなく、現実に真正面から向き合うことが必要」と指摘する。
(山形支局長 浅山章)