移民集団、米行き断念広がる メキシコ定住や帰国も
【メキシコシティ=丸山修一】中米からメキシコ入りしたキャラバンと呼ばれる移民集団のなかで、米国行きをあきらめ、自主帰国やメキシコ滞在を選ぶ人が増えている。メキシコ政府が職業説明会を開いて仕事を紹介するなど定住を促していることに加え、不法な国境越えを目指した移民に米当局が催涙ガスなどで厳しい対応をするのを目の当たりにしたためだ。
「こんな騒動が起きてはもう米国入りの可能性はないだろう」。ホンジュラス出身のイサウロ・メヒアさん(46)は地元紙ウニベルサルにこう話した。
25日午前、集団移民の一部がデモの最中に警備を突破し不法に国境越えを図ったが、米当局は催涙ガスで対抗。両国合わせて150人以上が身柄を拘束され、メキシコ政府は98人を強制送還処分にした。トランプ米大統領は強硬姿勢を崩しておらず、移民集団には米国入りをあきらめるムードが広がる。
現地報道によると26日には60人以上がメキシコ当局が用意したバスやトラックで出身国のホンジュラスやグアテマラに向けて出発。27日も100人以上が飛行機などで故郷にむけた途に就いた。別に200人以上が当局に帰国を申請した。メキシコ政府によると25日時点でキャラバン参加者のうち2千人近くが「当局の支援を受けて自主的に帰国を選んだ」。
断念の背景には収容場所の問題もある。5千人以上の移民の大半はグラウンドなどに野宿している。簡易トイレは汚物であふれ、ごみも散乱し体調不良を訴える移民も多い。食料や水も不足するなど難民申請待ちに数カ月を過ごすのは難しい。
メキシコ政府は同国へ定住するチャンスを与えている。収容場所から車で数分のティフアナ市内では移民集団を対象にした就職説明会を実施。難民申請を条件に工場勤務や運転手、店員、清掃員など様々な職種の仕事を紹介している。フアンラモン・ロドリゴさん(51)は「とにかく仕事がほしい。運転手の仕事に興味がある」と話した。
先行して始めているグアテマラ国境近くの南東部の2州に滞在することを条件としたプログラムでは、仕事の紹介だけでなく医療や子供の教育支援も提供し、3600人近くが参加を決めた。経済界と協力して全国各地で就職説明会なども始めている。ロペスオブラドール次期大統領も「中米出身者には労働ビザを与える」と明言している。
もっとも現在の移民集団の流れが一巡しても、中米諸国の治安問題や経済環境が改善しない限り、抜本解決にはならない。エブラルド次期外相は27日の会見で「(第2次世界大戦後に米国が欧州の復興を支援した)マーシャルプランのような開発計画が必要だ」と話し、米と協力した経済支援の必要性を訴えた。
移民集団の対応を巡っては、ポンペオ米国務長官は12月2日にエブラルド氏とメキシコシティで会談する予定だ。集団を構成するグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルの各国大統領も同1日のメキシコ大統領就任式の式典出席後にロペスオブラドール氏と会談する可能性がある。トップ交渉で具体的な対応策が出るかが注目される。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。