中国、地方レベルで取り込み加速 台湾地方選で与党大敗
【台北=伊原健作、上海=張勇祥】24日投開票の台湾の統一地方選で、対中融和路線の野党・国民党が勝利したことを受け、中国は地方レベルでの台湾の取り込みを加速する。両国の地方間の交流を増やし、中国への好感度を高めて「統一工作」を前進させる構えだ。
「両岸(中台)関係の平和的発展の利益を分かち合いたいという台湾民衆の強い願いを映した」。中国国営新華社によると、中国で対台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室(国台弁)の馬暁光報道官は25日に統一地方選をこう評価した。
そのうえで「より多くの県や市が中台都市交流に参加することを歓迎する」と語り、地方レベルの交流を活発化させたい考えを示した。
台湾の中央選挙管理委員会は25日に選挙結果を公表。全22県市の首長ポストの数は与党の民主進歩党(民進党)が13から6に激減し、国民党は6から15となって逆転した。地方議席の占有率でも民進党は26%と約10ポイント低下し、43%強を維持した国民党が突き放した。
16年に発足した民進党の蔡英文政権は低賃金問題の解決を求める若者ら支持層の期待に応えられず、年金改革で既得権層の猛反発も浴びた。民進党は独立志向のため、中台関係も停滞。中国からの観光客が減少し、生活に不満を持った市民の票が国民党に流れた。
蔡氏は大敗の責任をとって民進党主席を辞任した。政権の求心力低下は必至で、統一を目指す中国にとっては地方を引き寄せる好機となる。
「市に中台交流の専門チームを作る」。民進党が20年間執政を担う牙城だった南部・高雄の市長選で勝利した国民党の韓国瑜氏(61)は24日夜、早くもこう表明した。
中国は台湾の市民や地域社会が中国に抱く好感度を高めることを重視。国民党系の台北市議は草の根レベルで交流の誘いが強まりつつあることを明かし、「中国大陸行きの航空券を買えば、後は全部向こう(中国側)が旅行や交流の面倒を見てくれる」と語った。
統一地方選での投票行動は、20年の総統選の先行指標になる。中国側では国民党の党勢回復が続き、総統選で勝利することへの期待も高まる。
もっとも、急激に台湾を取り込もうとすれば、国民党に悪影響を与えかねない。台湾では中国への警戒感が依然として強い。国民党は統一地方選で「中台関係の停滞で台湾経済に打撃を与えた」と民進党を批判する一方、国民党の親中姿勢が鮮明になるのは避けた。
中国の露骨な工作は蔡政権と接近するトランプ米政権を刺激する可能性もあり、台湾の取り込みは慎重に瀬踏みしながらになるとみられる。