大阪万博「医の未来」発信 課題解決と娯楽 両立探る
2025年国際博覧会(万博)の開催地に大阪が決まった。大規模な万博の大阪開催は1970年以来2回目で、20年の東京五輪・パラリンピックに続くイベントだ。健康、医療を中心に技術貢献を目指す計画で、高齢化という人類共通の課題解決策を示す。インターネットの普及やテーマパークとの競合で最近の万博は、入場者数が低迷。万博の開催理念である課題解決と娯楽性の両立が成功のカギを握る。
立候補した日本(大阪)は、ロシア(エカテリンブルク)、アゼルバイジャン(バクー)の三つどもえの争いを制した。政府、経済界、地元自治体による新組織を年内にも立ち上げ、開催準備を本格化させる。約2兆円の経済波及効果に期待が高まる。安倍晋三首相は「世界中からたくさんの皆様が大阪、関西を訪れ、夢と驚きを与える万博にしたい」と強調した。経団連の中西宏明会長は「日本経済の持続的な成長に大いに寄与すると確信」とのコメントを出した。
AIやAR駆使
大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。人工知能(AI)や拡張現実(AR)などの先端技術などを駆使。会場となる大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」では、誰もが健康で豊かに長生きできる未来社会の実験場として世界にアピールする。なかでもライフサイエンスは有力分野の一つだ。
関西は京都大学iPS細胞研究所や神戸医療産業都市など医療関連の研究所が集積し、製薬会社の本社も多い。こうした蓄積を生かした展示をする。例えば、あらゆるモノがネットにつながるIoTで来場者の健康状態を計測。疲労や熱中症などを防ぐほか、個人にあった食事や運動を提案するアイデアがある。大阪商工会議所の尾崎裕会頭(大阪ガス会長)は「25年に『未来社会の実験場』に成長した大阪の姿を国内外に示したい」と意欲を示した。ネットで世界が瞬時につながる時代、会場でしか味わえない体験を提供できるかが、成否を分けそうだ。
万博の歴史は1851年の英国のロンドンにさかのぼる。産業育成と娯楽の両立が商業的に成功。1回目の大阪万博では6421万人を集めた。岡本太郎さんが手掛けたシンボル「太陽の塔」が観客を魅了した。
落ち込む来場者
万博の転機は94年だ。会場整備に伴う自然環境の破壊への懸念が高まり、博覧会国際事務局(BIE)は環境問題などを扱う社会課題解決型にカジを切った。だが、2000年のハノーバー万博では1800万人と目標の半分に満たなかった。 低迷の要因は主に2つある。1つはテーマパークなど競合する他の娯楽が増え、集客が難しくなったことがある。2つ目は、ネットの普及に伴うグローバル化が進み、海外の事情を手軽に把握できるようになった。万博に詳しい空間メディアプロデューサーの平野暁臣氏は「ネットの普及で国や企業が一方的に『未来はこうなる』と示しても、共感を得にくくなった」と背景を分析。ネットの発達で万博の展示を見るために、わざわざ、人が集うという万博自体の存在意義は薄れつつある。
70年の大阪万博から半世紀近く。時代が大きく変わる中、大阪万博では、万博が価値ある体験の場となるように、展示などに知恵を絞る必要がある。
2025年に開催される大阪・関西万博のニュースや特集をまとめました。参加国やパビリオン、地元の動きなど最新情報をお伝えします。